これから開業するあなたには、まず「店舗経営とは何か」ということを知っていただきたいと思います。
その答えを理解するためには「経営」「経営者」「繁盛店」の3つのキーワードを押さえなくてはなりません。
そこでここでは、この3つのキーワードを詳しく解説していきます。
開業するからには逃げられない「経営」について
まずは、「経営」について説明していきます。
あなたが自分のお店を開業したいと思ったとき、もしくは新たにお店を増やそうと思ったとき、次に挙げる5つのポイントを押さえなければなりません。
・経営のハードの部分
・スタッフとモチベーション
・組織管理と集客販促
・経営管理
・経営の情報源
それではそれぞれについて説明していきましょう。
経営のハードの部分を決めないと始まらない
まずは「経営のハードの部分」から考えていきます。これはお店の外側の部分に当たります。
・どこに出店するのか?
・どんな規模のお店を経営するか?
・どんな外装。内装にするか?
・どんな商品やサービスを提供するか?
などといったことを考えます。
サービスを提供するための箱(テナント)を用意しなければ、何もはじめることができません。
もちろん、インターネット上にお店をつくってもOKです。
一緒に働く仲間にとって最も必要なもの
次に「スタッフとモチベーション」について考えていきます。
自分一人でお店を切り盛りしない限り、スタッフは必ず必要になります。
そして、どれだけ優秀なスタッフでもモチベーションが低いと上手く機能しません。
しかもモチベーションは、放っておくとどんどん低下します。
そのため、スタッフのモチベーション管理を行い、何度も働く意義や動機を喚起しなければならないのです。
最近、モチベーションクライシスという言葉を耳にするようになりました。
これは、従業員の働く意欲の低下を表す言葉です。
豊かな国になった日本では、生きるために働くという概念が薄れ、働く理由を選べるようになりました。
これは逆に考えると、働く理由がないと働けないということです。
経営者は働く理由をしっかりスタッフに伝え、モチベーション維持に努めなければなりません。
経営者の最大の悩みとなる組織管理と集客販促
お店を経営する中で、もっとも大切なことはお客さまとの関係性です。
この関係性を構築するのが、組織管理と集客販促となります。関係性を構築するためには、どちらが欠けてもいけません。
いわば両輪のようなものです。
経営には、さまざまな悩みがありますが、突き詰めていくとこの二つに収束します。
この2つは、相互に関係しており、組織が上手く機能していないためにお客さまがやってこない、お客様が来ないからスタッフのモチベーションが下がり組織が上手く機能しない、という悪循環に陥る危険もあります。
車で目的地を目指すように経営する
経営者には、上手くハンドルを操作するスキルが必要になります。
経営者がハンドル操作を誤ると、方向性がずれ事業のゴールとは関係のない方向に向かってしまいます。
それどころか、事故を起こす危険性もあるのです。
経営におけるハンドルは、経営管理です。
「事業計画をしっかり立て、日々そのとおりに進んでいるのか」
「道をそれてしまったら、検証し改善できているか」
「見えないリスクを回避できるよう先手を打っているか」
などといったことが、非常に重要となるのです。
数字を管理するだけでなく、現場スタッフの声、お客様の声、業者さんの声などを集め、経営に活かしていかなければなりません。
市場は常に動いています。
事業を目的地に到着させるために、経営者はうまくハンドルをコントロールしなくてはならないのです。
情報を集め経営を有利に進める
経営における情報源は、様々なビジネス書やセミナー、コンサルタントなどが挙げられます。
経営を始めると、「他人のことはわかるけど、自分のことはよくわからない」という現象に陥ることがよくあります。
そんな時に、客観的に自分の経営を見るために、様々な情報をインプットしておく必要があります。
しかし、ここで一つ注意点があります。
それは、目的が決まっていない情報は機能しないということです。
目的を決定するのはあなた自身です。それだけは誰も教えてくれません。
まずは目的を明確にし、その目的を達成するために、さまざまな情報源を確保しておきましょう。
失敗しない開業するために、繁盛店の経営者を理解する
次に、経営者について見ていきましょう。
繁盛店の経営者には、二つの共通点が見られます。それは「想い」と「先見性」です。
あなたのお店にファンを引き寄せる「想い」
まずは「想い」から説明しましょう。
お金儲けは、商売人として当たり前の目的ですが、それだけでは、お客さまはお店のファンにはなってはくれません。
これは、人は理屈ではなく感情でモノを買うからです。
お客さまの感情に訴えるため、お店のオーナーがどんな想いでそのお店を運営しているのか、これをお客さまに伝えることが最大のポイントになります。
お店のポリシー、経営者の理念に共感してくれるお客さまはファンになってくれます。
繁盛店をつくりたければ、想いを大切にしなくてはなりません。
これは、経営者の方には何度言っても言い足りないほど重要なことです。
ぜひ忘れないようにして下さい。
では、これから開業するあなたはどのような想いを持つべきなのでしょうか?
まずは次の8つの事柄について考えて、答えを導き出してみてください。
・創業の想い、目的を明確にしてください。
・あなたが経営者である理由・目的を考えてみてください。
・顧客にどんな価値を提供したいと思いますか。
・従業員にどんな価値を提供したいと思いますか。
・従業員にとってどのような経営者でありたいですか。
・地域社会に対して提供したい価値はありますか。
・世の中に対して訴えたい独自の価値はありますか。
・これらを実現するために実践できることは何ですか。
しっかりと言葉にできるよう、じっくりと考えてみてください。
ビジネスを飛躍的に上昇させる「先見性」とは?
次に、「先見性」について説明します。まずは、先見性が理解しやすくなる話を1つ紹介しましょう。
「ビジネスで最上階を目指すときに、下りのエスカレーターを選んだとします。
そうすると、100%の力で駆け上がっても、実際の成果は40%となってしまいます。
しかし、上りのエスカレーターを選んだのであれば、100%の力で駆け上がったときに、200%の成果を上げることができます
これは、ソフトバンクの創始者、孫正義氏の言葉です。
この「上りのエスカレーター」を探すことが、経営者の先見性です。
これから一生をかけて行う事業が、上りか下りか徹底的に調べなくてはなりません。
あなたの先見性を磨くために今すぐできること
ビジネスで成功するためには、必ずしも経営者が群を抜いて優秀である必要はありません。
時代には流れというものがあり、その時流を上手に掴むことができるかが、成功の鍵を握る重要なポイントとなります。
先ほどの例で言うなら、上りのエスカレーターを見つけるということです。
どれだけ優秀な経営者でも、時流に逆らって成功するのは不可能です。
自然の流れとは、それほどに恐ろしいものなのです。
この自然の流れを見抜くのが先見性です。
先見性は、生まれつき持っている資質ではありません。
しっかりリサーチし、きちんとした計画を立てる習慣をつければ誰でも身につけることができます。
スタート段階の、たった1度の方向性の狂いが、将来大きなずれを生じさせるのがビジネスです。
夢や理想は、起業には大事なファクターですが、事業は存続しなければ何も意味がありません。
人生をかけた企業です。もう一度よく見極めてみてください。
あなたの強みで適正がわかる4つの経営者タイプ
ここからは、いろいろな経営者のタイプについて説明していきます。
世の中にはさまざまな性格、考え方、スタイルの経営者の方がいます。
しかし実は、経営者は大きく4つのタイプに分けることができるのです。
その4つのタイプとは次の通りです。
・アイデア型
・リーダーシップ型
・マネジメント型
・セーフティー型
これらにはそれぞれ相関関係があり、一人の経営者が複数のタイプを使い分けている場合もあります。
創業時に有利となるのは、アイデア型とリーダーシップ型のタイプ。
事業を安定、永続させていくために有利となるのが、マネジメント型、セーフティー型のタイプです。
起業を成功に導くのはアイデア型とリーダーシップ型
アイデア型の経営者は、事業として成長可能性が高い新規事業の芽を見つけ、アイデアベースのものを具現化することが得意なタイプです。
しかし、若干飽きっぽい傾向があり、成功が7〜8割見えたところで次の新しいアイデアに興味を持ち出す側面もあります。
自分の興味に正直に動くため、大きな組織を率いることは苦手です。
起業家タイプとも言え、ベンチャー企業の創業者はこのタイプが多いです。
次に、リーダーシップ型経営者は、新規事業の芽を成長させていきます。
リスクに対して積極的にチャレンジし、みんなを引っ張っていくタイプです。
攻撃的で常に進歩、前進を求めます。
また、状況をよい方向にヒートアップさせ、変革していくことが得意です。
市場拡大期に強みを発揮する経営者と言えます。
事業を永続させるのはマネジメント型とセーフティー型
マネジメント型経営者は改善支援タイプです。
創業型であるアイデア型、リーダーシップ型経営者が、市場を開拓したあとで大活躍する経営者です。
市場を拡大し、獲得した市場シェアを管理調整しながら利益を最大にしていきます。
現在のルールや業界の常識・秩序を維持しつつ、改善を加えていくことが得意です。
市場が安定している時に、強みを発揮します。
セーフティー型経営者は、絶対死守タイプです。
すでに獲得したシェアを徹底的に死守する、将来的な困難を予想し撤退するなど、守りの要としての活躍が期待されます。
前例を受けつぎ、淡々と維持していく。動いてはいけない環境や業務を死守することが得意です。
この2つのタイプは、創業者として活躍するタイプではありません。
創業者の意思と実績を引き継いで、さらなる市場の拡大や安定した経営を実現するために必要な経営者です。
アイデア型、リーダーシップ型でなくても起業を成功させる方法
あなたは、4つのタイプの経営者のうちどのタイプに当てはまるでしょうか?
自ら事業を興し、スタートする場合は、アイデア型もしくは、リーダーシップ型の経営者が不可欠になります。
とは言え、自分はマネジメント型だからといって起業を諦めなくても大丈夫です。
幹部や共同で経営を行う人間に、このタイプをスカウトして活躍する場を提供すれば、あなたの不足部分を補ってくれることでしょう。
会社のステージに応じて、経営者のタイプが一致しなければならないわけではなく、この4つのタイプが活躍できる場を提供し、うまく配置することが本当の事業家といえます。
リピーターであふれる繁盛店を開業するために
「起業する」と覚悟を決めたなら、まず考えて欲しいのが理念です。
理念といわれると難しそうですが、難しく考える必要はありません。
理念とは、お店や会社の存在理由です。
つまり、「なぜそこにお店がある必要があるのか」ということをはっきりさせる必要があります。
これがはっきりしない限り、あなたのお店は世の中に存在しなくてもよいということになってしまうのです。
潰れない会社の共通点をおしえます
起業家の方との多くが、最初は「あいつを見返してやりたい」「貧乏を克服したい」「誰にも命令されたくない」「こきつかわれたくない」という負のパワーに支えられて起業しています。
だからといって、これが悪いこととはいえません。
恨みなどの負のパワーは、大きな原動力となります。
事実として、負のパワーは開業から2~3年は、ものすごい瞬発力を発揮します。
しかし、瞬発力にはなっても長続きはしません。
負のパワーは自分のためだけに頑張る力です。
お客さまのことがあまり考えられていません。
そのため最終的には、お客様のため、自分のため、従業員のため、地域社会のため、これらの理念をきっちり打ち出せる会社だけが繁盛するお店として残っていきます。
いつまでも自分のことばかり考えていては、生き残ることはできないのです。
お客さまが来店してくれる理由とは?
理念の大切さは分かってもらえたでしょうか?
そこで、次に考えてほしいのが、「あなたのお店の強み」です。
なぜならこの質問は、融資面談などで頻繁に聞かれるものだからです。
面談の場面ですぐに答えられないと、融資も満足に受けることができないでしょう。
また、「強み=お客様の来店理由」とも言うこともできます。
強みを考えることで、繁盛する店を作る事ができるというわけです。
たとえば、クリーニング店を考えて見ましょう。
私の自宅周辺には、クリーニング店が5軒もあります。
これだけあると、どこに出していいか分からないですよね。
それでも、5店舗あるクリーニング店の中から、1店舗を選んでシャツを出しています。
私は「なぜ」5店舗あるクリーニング屋から、その1店舗をえらんでいるのでしょうか。
この「なぜ」の答えこそ、そのお店の強みです。
そして、強みはお客さまの来店理由になるのです。
ちなみに私は、そこの店主の対応が他よりよいから利用しています。
商品だけでなく、店員が強みになる場合もあるということですね。
起業するつもりでいるのなら、何かお店に行く時は「なぜ」自分がその店を選んだか、常に考える癖をつけてください。
お客さま視点に立ち、店を選んだ理由を考える癖が身につけば、自分のお店を作る際きっと役に立つでしょう。
理念と強みが決まれば、あとはこの二つの方向性を一致させていくだけです。
これができれば、お店は繁盛して行くでしょう。
差別化すると成功しない衝撃の理由
マーケティングの世界では、差別化が今でも流行しています。
差別化という言葉が流行してから、ビジネスの世界では、特別なことをしないと成功しないという風潮が生まれてしまいました。
もちろん、差別化は悪いことではありません。
ただ、実際にベンチャー企業や小さなお店が差別化しようとしても、非常に難しいのです。
なぜなら、差別化でうまくいっても、必ず他社にその成功事例をマネされるからです。
そうなると、資本が豊富な大企業が必ず勝ちます。
「差別化すれば勝てる」という言葉を鵜呑みにすると、繁盛するお店は作れないのです。
強みとは、差別化することではなく単純で平凡なことの積み重ねです。
「凡事徹底」こそ、繁盛店をつくる法則なのです。
成功のためには、テクニックに走ることなく、当たり前のことを正しくコツコツ続けなければなりません。
これこそ、お客様をひきつけるために最も大切なポイントなのです。
経営者にとって当たり前のこととは、経営の両輪である「組織」と「集客」に向きあい考え続けることです。
成功法則が地味だと思うかもしれません。
でもこれが、本物の繁盛店をつくるためには必要なのです。
お客さまが何度もリピートする5つの繁盛店パターン
繁盛店には必ず「理念」と「強み」があります。
それにプラスして、いくつかのパターンに分けることができます。
すべての繁盛店は、大きく次の5つのパターンに分けることができます。
・価格訴求パターン
・アイデアパターン
・接客品質パターン
・立地優位パターン
・流行回転パターン
この5つのパターンのうち、最低2つに該当することが開業成功のためには必要になります。
しっかりと理解して、あなたのお店に取り入れてください。
業界の常識を覆し繁盛店をつくる方法
まずは、価格訴求パターンから見ていきましょう。
今の経済状況の中で商売する場合、非常に重要な考え方となります。
「値決めは経営である」という言葉もあるように、提供価格の決定は経営において非常に大切なことです。
当然安くすればするほど、お客さまには喜ばれ集客も簡単になります。
実際、280円均一の居酒屋や、焼酎飲み放題の店が増えています。
このパターンの元祖は、100円均一ストアで、価格がわかりやすく選びやすいという利点に加え、とにかく安いというイメージでヒットしました。
しかし、低価格均一が流行っているからと言って、安易に価格設定をすると大変な目に遭います。
価格を安くするということは、それだけ利益を残すのが難しくなるのです。
このパターンで勝負する場合、しっかりとした原価計算が必要です。
そのうえで、安く仕入れることができるよう、独自の流通ルートを確保しなくてはなりません。
アイデアパターンは、今までにない業種を開発するだけではありません。
例えば、美容室で今まで平均で1〜2時間くらいかかっていたサービスを、15分という短時間でサービスすることや、家庭教師の業界で、勉強だけでなくスポーツも教えるといったように、アイデア次第で既存の業種の可能性を広げることができます。
今ある業界に新たなアイデアを吹き込むことで成功するパターンもあるのです。
状況を分析して繁盛店をつくる方法
接客品質パターンは、心温まるサービスを人の手で行っていくことでお客さまをひきつけます。
最近は人件費削減のため、注文をタブレットで行えるなど、ほとんど顧客と店員の接点がないお店が増えています。
このような状況でこのタイプのお店は、少々客単価が高くても居心地のよい空間を求めお客さまが訪れます。
この場合、名物オヤジやおかみさんとの会話も、サービスとして求められています。
このニーズがなくなることはないでしょう。
接客品質パターンで繁盛店になるためには、徹底した社員教育、スタッフ教育が欠かせません。
このタイプを目指すなら、教育に関しても開業時点で計画するようにしましょう。
立地優位パターンは、交通の便がいいとか、目立つ場所にあるということだけではありません。
最近では自宅から遠くても、インターネットで検索して来店するお客さまが増えているので、その他の要素も考える必要があります。
例えば、ラーメン屋を開業する場合を考えてみます。
単純に考えると、ラーメン屋がない地域に出店すると、ライバル店もなく繁盛しそうです。
しかし、たくさんラーメン屋が並ぶラーメン街のほうが、ラーメンを求めて訪れるお客さまが増え、集客の効率がよい場合もあるのです。
ターゲットがどのような行動を取るか、よく検証してから場所を決めなくてはなりません。
最後に流行回転パターンです。
地域によって、そのサイクルの長さは異なりますが、流行している業態や商品、サービスを狙い、期間を設定して開業するパターンです。
最近では事業のライフサイクルが短くなり、起業の平均寿命も10年を切っています。
そこであえて「この業態は○年」と決め、その後は違う業態のお店にチェンジしてしまいます。
これを実行するためには、業態を変えるために必要なコストも計算しておかなければなりません。
1つの成功業態にこだわらず、時流に合ったサービスを展開することがポイントです。
開業を成功させるために
いかがでしたでしょうか。
「こうすれば繁盛店ができる」といった正解は存在しません。
あなた自身の資質や、想いにより成功パターンは異なってきます。
そのかわり、あなただけの成功パターンは必ず存在します。
ぜひ、自分の事業に対する想いはどのようなものか、自分の強みは何か、よく考えて繁盛店を作り上げてください。