銀行融資で金融機関が見ているポイントを押さえ、審査を通過する

銀行融資の審査ポイント

創業時だけでなく、ビジネスを拡大するためには資金が必要です。

そのため企業にとって銀行などの金融機関は、資金を調達するために重要なパートナーということができます。

金融機関の支援なしには、創業することもままなりません。

 

金融機関とよりよい関係を築くためには、相手の考え方を理解しておく必用があるでしょう。

そこでこのページでは、金融機関が会社をどのように評価するのか詳しく解説していきます。

 

目次

継続して儲けが出るビジネスプランか?

借りたお金が返せる根拠を見せる

創業融資は、初対面の相手を信用してお金を貸すということです。

金融機関にとって、かなりのリスクを伴います。

ということは、金融機関があなたの会社を評価するポイントは「貸したお金がちゃんと返ってくるか」この一点になります。

 

ヒト・モノ・カネの視点から総合的に分析される

金融機関はあらゆる側面から会社の実態を把握し、将来を予測して融資の可否を検討します。

ビジネスモデルは事業として成り立つものか、提供する商品やサービスは市場に受け入れられるか、他社に負けない独自の強みがあるか、経営基盤は磐石か、そして事業に継続性はあるか、などなど、ヒト・モノ・カネの視点から総合的に会社を分析します。

 

最も重視されるのはカネ

ヒト・モノ・カネの中でも、金融機関が最重要視するのはカネです。

なぜならヒトやモノの分析は、どうしても担当者の主観に左右されますが、カネの分析は数値で客観的な評価ができるからです。

融資はお金のやり取りになるので、どうしてもカネの部分は重視されます。

 

カネの評価のしかた

では、会社のカネがどのように評価されるのか見ていきましょう。

すべての会社は、日々の経済活動を「貨幣」という単位で記録し、1年間の結果を「決算書」にまとめなければなりません。

 

金融機関は、会社が作成した3期分の決算書をもとに同業他社と比べたり、あなた自身の過去の実績と比べたりして、あなたの会社の価値を評価します。

会社の価値をはかる指針はいろいろありますが、融資に際して評価の対象となる指標は、「収益性」「財務の安全性」「成長性」の3つです。

 

ただし、起業前の会社や設立して最初の決算を迎えていない会社は、まだ分析の拠り所となる決算書がありません。

この場合は、創業計画書をもとに事業を判断することになります。

 

収益性を表す指標

収益性とは、会社が儲かる体質の会社かどうかということです。

収益性を見る指標としては「売上高経常利益率」があります。

売上高経常利益率は、1年間の経常利益を売上高で割って計算します。

利益は、売上から経費をマイナスして計算します。

会社が計算する利益にはいろいろな種類があります。

 

そのなかでも、金融機関が最も重視する利益が「経常利益」です。

経常利益とは、本業で稼いだ営業利益から、金融機関に支払う利息をマイナスした利益のことを指します。

つまり、売上高経常利益率を見ると、会社の実力を把握することができるのです。

 

経費の中には、経費として計上されるがお金の出ていかない減価償却費というものがあります。

そして、会社が最終的に獲得した利益に、減価償却費を足した金額をキャッシュ・フローといいます。

 

会社は、調達した資金で設備投資などの投資活動を行い、仕入れなどのコストをかけて売上げをあげ、残った利益から税金を支払います。

税金を支払ったあとに残ったお金が、会社が自由にできるお金です。

つまりキャッシュ・フローは、会社が自由に使えるお金と考えることができます。

 

会社は、自由にできるお金の中から借金を返済したり、新規事業に投資をしたり、株主に配当したりするのです。

そこで銀行は、1年分のキャッシュ・フローが返済額を上回っているかどうかチェックします。

キャッシュ・フローが返済額よりも少ないということは、利益からの返済ができないということになります。

さらに、会社が成長するための新しい投資も行えません。

キャッシュ・フローが少ないと、将来性のない会社という評価がなされてしまいます。

 

もう一つ、会社が儲かる体質か見極める指標として「自己資本比率」があります。

決算書を見ると、起業してから現在までの利益の積み重ねが、「自己資本」という名前で蓄積されています。

この場合の自己資本は、創業融資を受けるときの自己資本とは少し意味が違います。

ここでいう自己資本とは、会社の元手である資本金と会社が今まで獲得してきた利益の合計額です。

 

自己資本比率は、自己資本を総資本で割って計算します。

総資本は、会社が持っているすべての資産の合計額です。

自己資本比率が30%以上あれば、財務状況は健全であるといえます。

起業したばかりの会社は、利益の累積が少なく自己資本比率が小さくなりがちです。

しかし、毎年少しずつ上昇していれば問題ありません。

 

財務の安全性を表す指標

財務の安全性とは、会社の返済能力に問題はないかということです。

儲かっていても、すぐに使えるお金がない会社は危険と言うことです。

会社が安全かどうかは、手元の現預金と支払いのバランスで考えます。

会社が余裕を持って支払いができているかどうか図る指標に、「流動比率」「当座比率」があります。

 

流動比率は、流動資産を流動負債で割って計算します。

流動資産とは、これから売り上げる予定の資産や、短期貸付金など1年以内には現金化される予定の資産をいいます。

現金や売掛金、有価証券などすぐにでも換金可能な当座資産や商品がこれに当たります。

 

流動負債とは、すぐに支払わなければならない負債のことを指します。

支払手形や買掛金、1年以内に返済予定の借入金や従業員から預かった税金などの預り金がこれに当たります。

 

一般的に、流動比率は200%以上あると健全といわれています。

しかし、流動比率は単に多ければいいというものではありません。

なぜなら金融機関は、将来は費用化されて会社の利益を減少させる仮払金や、長期間売れていない不良在庫、回収可能性の低い不良債権、また代表者や関連会社への貸付金などが含まれていないか、と言った点にも注目しているからです。

 

当座比率とは、当座資産を流動負債の合計額で割って計算した指標です。

当座資産は、流動資産の中でも確実にすぐ現金化できる資産のことです。

当座比率が100%を下回っている会社は、支払いが追いついていない自転車操業の状態ということがわかります。

 

これらの比率は、金融機関の目から見たら多いに越したことはありません。

しかし、経営者視点で考えると、流動比率や当座比率が大きいということは、余剰資金を次のビジネスに投資できない将来性の乏しい会社ということになります。

 

一方で、儲かっていないのに会社にお金があるというケースもあります。

一見不思議に見えますが、実際よくあるケースなのです。

 

たとえば、設備を売却したり、体力以上にお金を借りたり、前月より売上が減少したりしたとき、一時的にお金がダブつきます。

いずれにしても会社にとって危険な兆候と言えます。

しかし本当に危険なのは、資金に余裕があるため会社がキケンな状態にあることに気づかないことにあります。

 

特に危険なのは、金融機関から体力以上に融資を受けている場合です。

借入が多すぎると、いずれ返済が行き詰まります。

さらい、本当に必要になったときに融資を受けることができません。

この状況が最もキケンなのです。

 

金融機関からの借入状況から、財務の安全性を見る指標に「有利子負債依存度」があります。

有利子負債依存度とは、利息を払わなければならない借金が総資産に対してどの程度あるかを見る指標です。

 

体力以上に借金をしていると、この割合が高くなります。

借入金がいくら多くても、代表者や代表者の身内から借りている場合は本当の意味で怖くはありません。

業績が悪くなっても、身内の場合は借金の返済を待ってくれる可能性が高いからです。

 

しかし、金融機関から借りている場合はそうはいきません。

返済が90日以上滞ると、銀行は信用保証協会に代位弁済を依頼します。

そうなると、会社の信用に著しく傷がついてしまうのです。

一般的には、有利子負債依存度が50%を超えると危険水域といわれています。

 

健全な資金調達ができているかを見る指標として、借入金の償還年数でチェックするという方法もあります。

借入金の合計額を1年分のキャッシュ・フローで割ると、借金を全額返すのに何年かかるか計算できます。

複数の金融機関から借りている場合は、すべての借入総額を合計して計算します。

これが借入金の償還年数です。

 

金融機関や融資の種類にもよりますが、償還年数が10年を超えると新しい融資は難しいと考えておいて下さい。

 

成長性を表す指標

成長性とは、会社が今後発展していく可能性があるかということです。

あなたの会社が上昇局面にあるか、下降局面にあるか、前年度の決算書と今年度の決算書を比較して評価します。

 

なかでも金融機関が気にするのは、売上高と会社の実力を示す経常利益の伸び率です。

売上が前年よりも伸びているかチェックする指標として「売上高伸び率」、経常利益がどの程度増えているかチェックする指標として「経常利益伸び率」があります。

 

前期より売上高が伸びていない会社は、売上高伸び率がマイナスになります。

当然これらの比率は、いずれもプラスが望ましいです。

しかし、売上高伸び率がマイナスでも、業態が変わったなどの理由で、経常利益伸び率がプラスになっているなら問題はありません。

 

最後の決め手はやる気

起業前の会社や設立して最初の決算を迎えていない会社は、創業計画書をもとに事業がうまくいくかを判断します。

しかし、創業計画は予定であり、100%計画どおりに達成できるという保証がありません。

 

そこで金融機関が気にするのは、事業で利益が出ない場合でも返済するアテがあるかという点です。

公庫の新創業融資や制度融資には、保証人もいなければ担保もありません。

金融機関としては、起業がうまくいかなかった場合に、回収の目処はつけておきたいものなのです。

 

そこで、金融機関はあなたが個人所有の定期預金や有価証券をどの程度持っているか、処分できる不動産があるかなどもチェックします。

また、あなたを支援してくれる家族や親しい友人がいるか、いる場合は家族や友人の資産状況や年収などにも関心を持ってきます。

あなたに近しい身内や友人が支援してくれないような事業を、赤の他人である金融機関が支援してくれるはずはありません。

あなたの支援者が多ければ多いほど、あなたの事業は信用度が高いと判断されるのです。

 

そして、最終的に融資の可否を決定づけるのは、あなたの本気度です。

本気度は、起業にあたってどれだけ自分で資金を用意したかということで判断されます。

創業資金を貯める努力をしないで、資金の大部分を融資に頼るという姿勢では、本気度が低いと判断されてもしかたがありません。

 

経営者としての資質があるか?

金融機関は中小企業の決算書を信じていない

中小企業では、組織として運営されていることより、社長個人の能力や資質に業績が依存していることが大きいのが実情です。

そのため金融機関は、中小企業が作成する決算書は上場企業のように全面的には信用できないと考えています。

これは、中小企業が決算で不正を行っているとか、いい加減な帳簿をつけているといったことではありません。

 

上場企業は不特定多数の人から出資を受けるので、厳格な決算が求められます。

「企業会計原則」という統一的な会計基準に準拠して決算を行い、監査法人が会計監査を行なったうえで決算書を公表します。

 

対して中小企業では、出資者は代表者と家族や友人くらいのものです。

そのため、会計基準を厳密に守る必要がありません。

中小企業は、税法基準という正しい税金を計算する決算書さえ作っていればそれでいいのです。

 

社長や従業員の人となりは大切

中小企業の決算書は、統一的な基準に準拠していません。

そのため、作成する会社の個別事情や経理担当者の解釈次第で、利益やそのほかの数字が変化します。

信じられないかもしれませんが、中小企業の会計の現場ではよくある現象です。

 

金融機関もそのことは分かっています。

だから、決算書に現れる数字だけでなく、社長や従業員の人となりを把握することが、会社の実態を把握するために不可欠と考えているのです。

金融機関が見るヒトとは、経営者、役員、株主、従業員です。

そして、会社が組織として機能しているかも、重要なチェックポイントになります。

では、それぞれの内容を見ていきましょう。

 

金融期間が特に重要視する経営者の資質

中小企業では、ほとんどの場合株主と経営者が同一です。

そのため、社長の資質や考え方が事業の成否に決定的な影響をおよぼします。

そこで金融機関は、社長の経営能力、気質や性格、年齢や健康状態、社長になる前の経歴、家族構成などあらゆる側面から、社長の人間性を把握しようとします。

 

なかでも、特に重要視されるのは経営者としての資質です。

金融機関の考える優れた経営者とは、信念を持って会社を経営し、従業員を管理するマネジメント能力にすぐれ、戦略的に将来のビジョンを描ける人物です。

 

社会に貢献したいという使命感を持って会社を経営しているか、現状を冷静に分析して戦略的に事業展開する能力があるか、強いリーダーシップを持って従業員をリードしているか、会計や経理など経営に欠かせない数字をきちんと把握しているかといった点が評価の対象になります。

 

会社の業績に悪影響をおよぼす役員の資質

会社の規模が大きくなると、社長1人の力で会社を経営するには限界があります。

そこで、社長をサポートするのが役員です。

金融機関は、経営者を支える役員の構成や、経営陣1人ひとりの能力、役員としての資質などもチェックします。

 

たとえ業績がよくても、従業員とコミュニケーションがとれていない場合評価は低くなります。

身内というだけで実力がないのに役員になっている人はいないか、役員間に対立がないか、業績不振の立て直しのために親会社から役員が送り込まれていないかといったことがチェックされます。

金融機関は、将来会社の業績に悪影響をおよぼす要素がないかをチェックするのです。

 

争いや親会社に不安がないか問われる株主の資質

株主について金融機関が気にするのは、大株主と社長一族の間に内輪もめがないか、株主間に相続の争いがないかなど、会社の業績にマイナス要因となるものがないかといった点です。

特に、オーナー以外に法人株主がいる場合、金融機関は法人株主の情報に大きな関心を持ちます。

株主は経営に直接携わるわけではありません。

しかし、上場企業などの株式の一部を所有していれば、それだけ会社の信用力が高くなるのです。

 

一方で、金融機関はあなたの会社に貸したはずの資金が、別会社の赤字の補てんに使われることを極端に嫌がります。

なので、法人株主がいる場合には、破たんしそうな親会社が資金調達のために子会社をつくったのではないか、法人株主はいなくても親族が別会社を持っているのではないか、その別会社が資金難に陥っていないか、といったことを慎重に検討するのです。

 

実際に現場を動かす従業員の資質

経営陣がどんなに優れた事業戦略を策定しても、働くヒトがいなければ会社は動きません。

起業した当初は、社長自身が従業員も兼ねているかもしれません。

 

しかし、少しでも規模が大きくなれば、全てを一人で行うことはできず従業員を雇うことになるでしょう。

そのとき、従業員が生き生きと働いているか、能力の高い人材がそろっているか、適材適所に必要な人材が配置されているか、社員全員が労働に対するモチベーションを高く維持しているか、職場に活気はあるかといった点が、評価の対象になります。

 

そのほか従業員の平均年齢や従業員の定着率も、チェックポイントとなります。

 

1人の突出した能力よりも問われるのは組織の資質

ビジネスの現場では、1人の突出した能力よりも組織としての強みをいかに発揮できるかが、事業成功に大きな影響を及ぼします。

現代のように情報が一瞬にして世界中に伝達する時代では、誰も思いつかなかった新商品を開発したとしても、すぐ誰かに真似されます。

他社が似たような商品を出して、最後には価格競争に巻き込まれていくのです。

 

あっという間に競合他社や異業種が参入してくるので、なんの工夫も無く会社が勝ち続けることは不可能といえるでしょう。

このような状況下で、商品の競争力を維持して勝ち続けていくためには、組織として固有の競争力をつけていく必要があります。

組織としての競争力のことを、組織能力といいます。

 

組織能力とは、その企業が固有に持っている有形無形の資源を組織として活用する能力のことです。

その会社が長年かけて積み上げたもので、外部からはわかりにくい、いわば裏の競争力と言うこともできるでしょう。

組織能力は表に出てこないからこそ、他社が真似できない独自の強みとして威力を発揮します。

 

商品・サービスの競争優位性はあるか?

営業力では大企業にかなわない

商品が売れるかどうかは、「商品力×営業力」で決まります。

商品力と営業力、どちらを伸ばしてもビジネスは成長します。

しかし中小企業は、商品力で勝負をしなければなりません。

 

なぜなら、営業力は資金力に比例するからです。優秀な営業マンを雇い、マスメディアを使って大量広告をすれば、天才的なアイデアをひねり出さなくても、商品は認知され売上も上がります。

資金力に乏しい中小企業が、営業力で大企業と勝負をするのは、無謀といえるでしょう。

 

商品力なら小さな起業でも立ち向かえる

商品力なら、大企業と戦うことができます。

お金がなくても斬新なアイデアと企画力があれば、大企業に劣らぬ商品を開発することが可能です。

最近ではSNSの発達により、誰もが簡単に情報を発信できる時代になりました。

優れた商品であれば、それだけ口コミで広がる可能性が高いのです。

優れた商品に勝る販促ツールはないと言うことも出来るでしょう。

 

優れた商品があれば、給料の高い営業マンは不要です。

広告宣伝費に多額の資金を投入する必要もなくなります。

インターネットという巨大な口コミツールで、商品の評判は自然に広がっていきます。

 

逆に、商材の欠点を隠して、販促や営業のスキルだけで売上をあげても長続きしません。

ユーザーから発信された悪い評判は、あっという間にネットを通じて広まってしまいます。

金融機関もそれを知っているので、あなたの商品やサービスに持続的な競争力があるかという点を重視します。

 

経営資源でいうモノとは、どのような商品を販売しているかに留まりません。

どこから仕入れて誰に売っているのか、生産体制は盤石か、他社商品と比べて独自性があるか、市場においてどのようなポジションを取っているかなど、総合的な商品力を指すのです。

また必要な許認可は取っているか、特許の使用契約や独占的な販売契約について長期の契約が締結できているかなど、あなたの会社の内部環境すべてが分析されます。

 

商品の分析

文字どおり、何を売っているのかを分析されます。

取り扱っている商品の特徴や品質、機能、商品の強み、他社に真似のできない独自性といった点が検証されます。

 

例えば、パソコンや小型機器の部品メーカーの場合を考えてみます。

大手企業や少数の取引先のために、タイプの異なる商品を受注生産しているとします。

この業界は技術の進歩が早く、技術競争の激しい業界です。

この会社が、他社には真似できない独自の特許を持っていたり、他の追随を許さない最先端の技術力を有していたりするなら、それを全面的にアピールするのです。

 

あたりまえのように聞こえるかもしれませんが、アピールが上手な中小企業はあまり多くありません。

また、他社に比べ優位な部分に気がついていないケースも多くあります。

 

同時に、価格の設定も重要な要素になります。

似たような商品を同業他社より高く値つけすれば、当然価格競争力を失います。

また、他社より低く設定すると、売上は上がっても十分な利益ができません。

どちらにしても会社は疲弊し、銀行への返済に苦しむ結果になりかねません。

このような結果にならないために、商品やサービスに適正な価格設定がされているかもチェックの対象になるのです

 

営業体制の分析は販売戦略から顧客管理力まで

銀行への返済は利益から行われます。

そして、利益をもたらしてくれるのはお客さまです。

どんなに優れた商品を開発しても、商品の情報がお客さまに届かなければ、その商品は存在しないのと同じです。

 

知ってもらわなければ、売ることができません。

売上拡大のためには、本物といわれる商品を開発し、誰にどうやって営業するかが重要な戦略になってきます。

 

そこで銀行は、会社の販売戦略を分析します。

販売戦略には新規顧客の開拓だけでなく、既存客をキープする顧客管理力まで含まれます。

また、企業相手のビジネスをしている場合は、主要な取引先も重要な要素になります。

主要な取引先が安定した経営をしているか、取引先とあなたの会社の親密度は高いか、将来も安定した取引は可能かといった点までチェックされるのです。

 

生産体制によって異なる継続的に売れるしくみ

起業においては、1回だけの成功は意味がありません。

会社は、存続していかなければなりません。創業融資は5年、長いものでは10年というスパンで返済していきます。

継続しなければ、借りたお金を返すことすらできないのです。

 

どんなにお客さまから求められる商品を開発しても、材料を安定的に確保できなかったり、購入後のメンテナンスを保証できなかったりすれば、継続的に商品やサービスを提供することはできません。

そのため、継続的に売れる仕組みができているかどうかは、会社の将来性を考えた場合重要なチェックポイントになります。

生産体制を分析する場合、会社が受注生産か見込生産か、原料から商品までを一貫して生産しているか、生産工程の一部だけを請け負っているかで、見るポイントが異なってきます。

 

受注生産の場合は、景気の動向や季節変動、取引先の経営状態に売上も影響を受けます。

売上が不安定になりがちなのです。

一方、見込生産の場合は、見込み違いにより不良在庫を大量に抱えてしまうおそれがあります。

在庫を抱えると、資金繰りが一気に悪化してしまいます。

一貫生産の場合は、機械の稼働率や作業効率、季節変動の影響をどの程度軽減できるが焦点になります。

 

世界中のパソコンの8割で、インテル製のCPUが使われています。

アップル社はiPhone端末の製造を日本企業などに発注しています。

コンピューターの世界では、素材の加工や部品の生産が専門化されている商品を製造する場合、各専門の工程を複数の会社で分担して行っています。

これを、エコシステムといいます。

 

もし会社が、エコシステムに組み込まれているなら、他社にとって代わられることのない絶対的な存在であることをアピールすることができるでしょう。

このように、金融機関に対しては、自社のビジネスモデルに即した問題点の把握や解決策、自社の強みを示すことが大切なのです。

 

商品の強みはマーケッ卜に対して競争力があるか?

金融機関が商品を見るとき最も重要視するポイントは、品質や価格、機能面において独自性があるか、マーケットにおける競争力があるかという点です。

マーケットは、常に私たちが営む社会の中に存在します。

そしてマーケットを構成するのは、自社、お客さま、競合他社の3者です。

 

お客さまの望む商品を提供するだけでは、残念ながらビジネスという戦場を生き抜くことはできません。

なぜなら、マーケットには常に競合他社が存在しているからです。

マーケットのライバルは、あなたの顧客を常に狙っています。

 

仮にライバルがまったく存在しないマーケットを発見したり、ライバル社にできない商品を提供したりすることができれば、商品はマーケットにおいて競争優位性を保つことができます。

このような状態を、ブルーオーシャンといいます。

しかし、すぐれた発明が特許権で保護されているといった、高い参入障壁がないかぎりブルーオーシャンを維持することは不可能です。

 

なぜなら、あるビジネスが儲かるとわかると、ライバルが次々と参入してきます。

自社にできることは、たいてい他社にもできてしまうのです。

そして、あっという間に価格競争がはじまります。

 

このように競合他社がひしめく市場を、レッドオーシャンといいます。

レッドオーシャンで生き残るためには、あなたの会社だけが持つコア・コンピタンスは何かを、考え抜くことが大切です。

コア・コンピタンスとは、競合他社に真似されにくく、お客さまにとって価値があり、あなたの会社がその強みを持続することが可能なものです。

 

金融機関に事業の独自性を示し、将来も安定して発展していける理由をアピールすることが大切です。

 

マーケットを取り巻く環境は良好か?

市場を取り巻く環境を無視することはできない

あなたの会社がお客さまの要求に応じ、優れたサービスを提供したいと考えても、法律で禁止されてしまえばそのサービスを販売することはできません。

どんなに素晴らしいビジネスのアイデアも、時代の要求にマッチしていなければ社会に受け入れてもらうことはできません。

このようにマーケットの状況一つで、ビジネスは簡単に浮き沈みします。

 

あらゆるマーケットが、政治の動向、社会の動向、経済の情勢、業界の動向、技術革新の動向など、市場を取り巻く外部環境の影響を受けます。

そこで金融機関は、市場を取り巻く外部環境を分析し、あなたのビジネスが事業として成立するか、将来性があるか評価します。

ただしどのような環境に影響を受けるかは、会社の置かれている状況や商品によって異なります。

外部環境の分析は個々の事情を考慮して、項目を絞って行われます。

 

政治の動向が市場を左右する

日本が法治国家であるかぎり、すべての業界は政治の動きに何らかの影響を受けます。

法律で規制されているものもあれば、逆に守られている事業もあります。

政府がその市場を後押ししようとしているか、新しい規制が導入されるか、規制が取り払われるかなど、非常に大きな問題となります。

 

例えば、安倍政権が推し進める政策の柱に、民間の力を引き出す「成長戦略」があります。

産業の新陳代謝とベンチャーの加速を図るため、これまでになかった「創業補助金」という制度が設けられました。

 

補助金とセットで申し込めば、金融機関からの融資も受けやすくなり、資本性ローンを組みあわせれば、ITベンチャーなど新しい技術力のある会社が起業しやすい環境になっているのです。

特に日本政策金融公庫は国の政策を実現するための金融機関なので、積極的に利用しましょう。

 

経済の動向が会社の先行きを左右する

市場を取り巻く経済の動向についても検証が行われます。

少子高齢化にともない、日本市場は縮小傾向にあります。

それに比べ、ASEAN経済の成長は目を見張るものがあります。

 

国内の市場に見切りをつけた中小企業が、毎日100社単位で海外に進出している時代です。

どんなに会社が小さくても、日本国内の経済状況だけでなく、世界経済の状況に大きく影響を受けてしまいます。

 

例えば、海外から商品を仕入れる場合、円が10円安くなるだけで粗利益が吹っ飛んでしまいます。

反対に輸出中心の会社は、円が10円高くなれば、それだけで赤字に転落してしまうかもしれません。

 

また、日銀や金融機関の動向にも注意が必要です。

低金利なのか、新規の融資は受けやすいのか、会社の所在地の制度融資は充実しているのかなど、変化し続けています。

会社の規模が小さければ小さいほど、金融環境の影響をもろに受けてしまうのです。

 

社会に求められない商品は先がない

社会の動向とは、人々が今求めているもののことをいいます。

どんなに優れた商品でも、時代から求められない商品に将来性はありません。

 

例えば、原子力発電所の事故から、人々はエネルギーに対する意識を高く持つようになりました。

大量消費生活がもたらした地球環境の破壊に対する反省から、真に健康的で幸せな生活を送るためには、心・体・食・地球環境がバランスよく調和することが大切であると考える人々が増えています。

 

彼らは健康のためにスポーツで汗を流し、食材には無農薬で育てた有機栽培食品を選び、少々高くてもエコカーに乗るといった消費行動をとる特徴があります。

彼らに対しては、ジャンクフードや排気量の大きな車は売れなくなっているのです。

 

社会の動向は、国の政策や大事件により一瞬で変わってしまいます。起業家のみなさんは常にセンサーを張りめぐらし、世の中の動きをキャッチする感度を磨いておく必要があるでしょう。

 

技術革新の動向が新しい価値を生み出す

技術革新とは、商品の生産性が画期的に向上する技術上の発明のことを指します。

コンピューターやバイオの世界にかぎらず、さまざまな分野で技術革新が目覚ましいスピードで進んでいます。

気がつくと、技術革新の流れに取り残され、それに代わる新しい産業が台頭してくるのです。

 

さらに技術革新はイノベーションとも訳されます。

単なる技術の進歩だけでなく、画期的なアイデアによって、既存の価値観を覆すようなビジネスモデルのことを指す場合もあるのです。

Facebookの登場で、世界中の人々はリアルタイムで個人の情報を発信できるようになりました。

LINEを使えば、相手のアドレスを登録しなくても、瞬時にメッセージを送信できます。

コンピューターの技術革新は、情報革新という形で社会に新しい価値を見出したのです。

 

業界がどのステージにあるかがポイント

どんなに優れた商品を持っていたとしても、永久に繁栄を続ける市場は存在しません。

すべての市場には、ライフサイクルがあります。

テクノロジーが進化し、人々の嗜好がめまぐるしく変化する昨今では、ひとつの商品のライフサイクルはどんどん短くなっています。

 

市場のライフサイクルは、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階に分けて考えます。

ライフサイクルは商品だけでなく、会社が所属する業界にも同じように存在します。

金融機関は、あなたの会社と商品が所属する業界のステージを見極め、あなたの会社の将来性を判断するのです。

 

「導入期」は将来性をアピールする

導入期は、競合が少なく商品の認知度も低い状況です。

ブルーオーシャンの可能性もありますが、売上に比べて販売コストがかかるため、利益を出すのが難しい状態と言えます。

しかしうまくいけば、先行者利益を得ることができるので、大きなリターンを期待することもできます。

今後はビジネスとして成長する、将来性のある市場というアピールが重要となります。

 

「成長期」はブランド戦略をアピールする

成長期は、商品が社会に受け入れられ、利益が出やすい状態です。

ただし油断していると、業界内の競合他社が参入してきて、他社との区別がつきにくくなります。

そうなってしまうと、将来にわたって利益を出し続けるのが難しくなります。

 

そこで、自社商品に付加価値をつけてブランド化を図るといった事業戦略が重要になります。

体力のあるうちに新しい事業展開を考える姿勢が大切です。

 

「成熟期」は他社との差別化をアピールする

成熟期には、異業種の会社もどんどん参入してきます。

競争が激化し、値下げ合戦が始まります。いわゆるレッドオーシャンの状態です。

価格競争に巻き込まれると利益が出にくい状況になり、会社が疲弊してしまいます。

そこで、価格以外の自社の強みを掘り下げ、独自性を打ち出さなくてはなりません。

他社と差別化を図る戦略が取れているかが重要となります。

 

「衰退期」は今後の事業展開をアピールする

衰退期は、売上が減少し一企業の努力で利益を出し続けるのは難しい状況です。

イノベーションによって新商品を開発するか、市場から撤退するか判断すべきときです。

会社の考え方や方向性をきちんと示し、今後の事業展開や構想を打ち出さなくてはなりません。

ただし、ライバルが次々と撤退していくので、こだわり続けることで生き残るチャンスも生まれます。

 

 金融機関がチェックするポイントを押さえ、融資を成功させよう

このような判断基準で、金融機関はあなたとあなたの事業を見ています。

今回紹介したポイントを押さえておけば、金融機関に好印象を持ってもらうことができるでしょう。

金融機関からの印象が良くなれば、融資をしてもらうのも難しくありません。

事業を立ち上げると、金融機関とは長く付き合っていくこととなります。

金融機関と良好な関係を構築するためにも、ぜひ参考にして下さい。

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これまで、20代前半より8店舗のお店をオープンしてきました。銀行などから融資を受けることなく無借金で10年以上経営するも、自分の将来が見えなくなってしまったため、全て従業員や知人に売却。

その後、店舗の開業、店舗展開に携わり、これまでオープンしてきた店舗は100を超えます。

また、集客の専門家でもあるため、全国各地より『集客支援』の依頼が絶えず来ており、これまでサポートした個人事業主・企業様は500件以上となっています。

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