自分の飲食店を持つことを夢見る人はたくさんいますが、実際にオープンまで漕ぎ着けることができる人はほんの一握りです。
なぜ、同じ夢を持ちながら、実現できる人とそうでない人に分かれてしまうのでしょう。
開業までには様々な壁が立ち塞がります。
この壁をすべて乗り越えることができた人だけが、自分の店をオープンするという夢を叶えることができるのです。
そこでこのページでは、開業を夢見る人の前に立ちはだかる壁の乗り越え方を紹介していきます。
夢があやふやだと開業することはできない
今、あなたはどんな夢を描いているでしょうか?
これから作り上げていくお店をどのようにするか、お店を持った自分はどんな姿か、どこまで自分のお店を拡大していくかなど、自分の夢をイメージするのはとても楽しいことだと思います。
あなたが思い浮かべる未来の姿こそ、あなたの目指すべきゴール地点です。
何事も最初が肝心です。自分の目指すゴールをはっきりさせること、これが飲食店開業のための第1歩と考えてください。
ゴールが決まれば、進むべき道も決められるようになります。
事前に道順などを調べることができれば、飲食店経営に現れる様々な壁も回避できる可能性が高くなるのです。
具体的な開業後のゴールを決めないと失敗する理由
具体的なゴールを決めないと、どのような壁にぶつかるでしょうか。
例えば、具体的に目標を決めていないと場当たり的な決断をしてしまいます。
今の売上が順調だからと、無計画に次の店舗を出店してしまうと、売上が落ちたときに対処できなくなります。
こうなると、もとあった店舗まで潰すことになりかねないのです。
経営は、目的地を決め計画を立てなければ進むべき道が分かりません。
なんとなくあの辺まで行きたいといって適当に進むと、近道を探すこともできないし、危険が迫っても気がつくことができません。
さらに進む方向を間違えれば、引き返さなくてはならなくなるのです。
夢は具体的に描くからこそ、そこにたどり着くまでの道のりが明らかになります。
店舗を増やすにしても、いつの時期までに社員をどのくらい雇って、どういった教育をしながらお店を任せるか、出店資金はどのタイミングにお金がいくら必要で、いつまでに融資の準備をしなければいけないかなど、具体的に考え準備をするからこそうまくいくのです。
開業を夢見ている人は、もう一度自分のゴールを再確認してみましよう。
できるだけ具体的にゴールを決め、やるべきことを明確にしなくてはなりません。
さらにいえば、それを実行に移すことも大切です。
実行しなければ、計画もゴールも何も意味のないものになってしまいます。
人はなかなか問題が起こる前に準備することができません。
しかし困ってからでは、手遅れなのです。
開業資金に潜む巨大な壁をクリアする方法
開業の計画を立てたとしても開業資金がないと何もはじまりません。
内装のことや提供するメニューのことなど、どうしても目に見えるところに気持ちが行きがちですが、まずは「カネ」のことを考えなくてはならないのです。
しかし、飲食店オーナーの中には、「お金のことは苦手だから」とほったらかしにしている人も少なくありません。
開業資金の使い方には大きな壁が潜んでいます。
この壁を乗り越えることができないと、開業することすらできないまま終わってしまいます。
あなたの夢をスムーズに叶えるためにも、「カネ」のことをきちんと考えておきましょう。
開業資金の読みの甘さは命取り
ガソリンを少ししか入れていない車は、当然途中で止まってしまいます。
飲食店経営も同様です。少しの資金しかなければ、途中で倒産してしまう危険が高まるのです。
例えば、開業資金は何とかできたものの、思うように物件が見つからず想定より大きい物件を契約したとします。
物件が大きくなると、家賃や保証金は当然上がります。
さらにそれだけではなく、内装・設備などの工事費も広い分高くなりますし、什器・備品代などにも影響が出てきます。
「少しくらい大丈夫」と甘い考えで進めてしまうと、開業費用はどんどん膨らむ可能性があるのです。
何とか膨らんだ費用を払い開業できたとしても、その後の資金に余裕がなくなると経営が行き詰まる可能性が高くなります。
開業すると、想定外のトラブルが頻繁に起こります。
そして、そのたびに費用がかかるのです。
開業でお金をかけすぎると、このトラブルに対応できなくなります。
順調に店舗を経営していくために、不測の事態もシミュレーションをしながら慎重に物事を進めておけば、緊急事態でも余裕を持って対処ができます。
そのためには、金額を厳しめに見積もり、手元の資金に余裕をもたせておくことも大切なのです。
お金を貸してくれる銀行を見極める方法
あなたももしかしたら独立開業を目指し、一生懸命開業資金を貯めているかもしれません。
ですが、開業資金をすべて自分で貯めるのは難しいですよね。
そこで、ほとんどの人は自己資金にプラスして、銀行からの融資を受ける計画を立てます。
この計画自体は自然なことで、すでに開業している人もこの道を通っています。
しかし、開業資金の融資はどこでも受けられるというわけではありません。
今後融資を申し込む際に慌てないよう、あらかじめ銀行についても知っておきましょう。
開業時に融資を受けられる銀行は限られる
まず、銀行の中で頭に浮かぶのは都市銀行かもしれません。
全国に支店があるので、融資を受けるにも便利なような気がします。
もしかしたら、現在勤務している飲食店と付き合いがあり、銀行の担当者とも顔見知りだから融資してもらえると考えているかもしれませんね。
しかし、開業時は都市銀行から融資を受けることは難しいでしょう。
都市銀行は規模が大きい分、リスクを取る必要もないため、開業融資のようなハイリスクな融資はしてくれないのです。
開業時に利用できる、代表的な金融機関は日本政策金融公庫です。
特に、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」という制度は開業時の強い味方となってくれるでしょう。
開業時でも融資が受けられる銀行の選び方
私たちが日常的によく利用する銀行は、地方銀行やゆうちょ銀行ですが、身近であれば融資が受けられるわけではありません。
これらの銀行からは、開業資金の融資を満額受けられる確率はとても低いというのが現実です。
「足りないお金は銀行から借りればいいか」と気楽に考えていると、あとで資金調達に困ることになりかねません。
開業の場合、利用できる金融機関は日本政策金融公庫、もしくは信用保証協会の保証付きで制度融資というものが受けられる場合もあります。
それ以外では、大きな金額を融資してもらうことは難しいでしょう。
開業を目指すなら、貸してくれる可能性のある銀行を知っておかなくてはなりません。
銀行融資を受けるために必要な条件とは?
開業資金の融資が受けやすい日本政策金融公庫でも、誰でもいくらでも融資を受けられるわけではありません。
融資にはいくつかの条件があり、この条件をしっかりと確認していないと、いざ開業する際にお金が借りられないという事態になりかねません。
資金調達でつまずかないためにも、細かい条件まで確認しておきましょう。
自己資金は十分確保できているか
融資の条件を確認していないと、思うような融資が受けられない場合があります。
例えば、作りたいお店に800万円必要で、手持ちの資金が50万円の場合を考えてみます。
この場合、審査を受けても希望の融資が下りることはありません。
なぜなら、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」では、創業資金総額の、10分の1以上の自己資金がなければ融資が受けられないからです。
この場合、両親からお金を100万円借りるとすると、自己資金が150万円になります。
一見すると、創業資金総額の10分の1を超えるように見えますが、そのお金は融資の審査で自己資金と認めてもらえない可能性があります。
自己資金は、基本的に通帳を見て地道に貯金していたかどうかで確認されます。
そのため、通帳にいきなり多額のお金が入金されていても、純粋な自己資金と判断されない場合があるのです。
また、事業の規模を縮小し500万円の創業資金で事業をはじめるなら、自己資金が50万円でも融資が受けられる可能性があります。
しかし、せっかくはじめる自分のお店なので、あまり妥協するのもどうかとおもいます。
焦る必要はないので、一歩一歩確かめながら進めていくことをオススメします。
融資条件は必ず確認しなければならない
特に飲食店を開業する人にとって、物件との出合いはとても重要なことです。
それだけにいい物件を見つけると、資金がまだ調達できていないにもかかわらず、物件を押さえてしまう人も少なくありません。
しかし、始めて開業する人が利用できる日本政策金融公庫の「新創業融資制度」には「現在の企業に継続して6年以上勤めている方」「創業資金総額の、10分の1以上の自己資金が確認できる方」などといった要件があります。この要件を満たしていないと、どんなに創業計画書が良くできていても希望額を融資してもらうことはできないのです。
この条件を知っていれば、自分がいくら自己資金を準備すればよいか分かります。
800万円の資金が必要なら、何とか自分で80万円は準備しなければならないのです。
これを知らず、融資を受けるための準備に時間を使っても無駄になってしまうのです。
無担保、無保証人でも安心できないワケ
融資を申請する前には、「担保」や「保証人」を用意することも検討しておくとよいでしょう。
担保とは、融資を受けた人の返済が難しくなった時に、銀行などに差し出されるもので、「物的担保」と「人的担保」の2種類に分けられます。
物的担保は不動産や有価証券、預金など、人的担保には保証人や連帯保証人などがあります。
新創業融資制度は、基本的に担保や保証人がなくても融資が受けられるので、新しく事業を始める人にとってはとても使いやすい融資といえます。
ただし、融資には限度額があるうえ、申請内容によって担保や保証人が必要になる場合もあります。
人によって状況は様々ですが、「無担保、無保証人で大丈夫」と安易な考えでいると、資金調達でつまずくことになるかもしれません。
反対に、担保や保証人を用意していると、資金調達の間口は広がります。
最初の資金調達を順調に終えるためにも、担保や保証人についても考えておくとよいでしょう。
軽はずみな行動は事故のもと
融資の申請をする際、肝に銘じておかなくてはならないことは、慎重に行動するということです。
新創業融資制度が使いやすいとは言え、申請すれば貸してもらえるというものではありません。
軽い気持ちで申請すると、借りることができなかったときの対応が難しくなってしまいます。
申請内容は十分吟味すること
「業界の経験が長いから融資もしてもらえる」と考え、軽い気持ちで申請書類を作り、飛び込みで日本政策金融公庫に融資を申請する方もいます。
しかし、融資の審査はそれほど甘いものではありません。
融資ができないという回答を受けて、慌てて対応策を考えても手遅れです。
融資を確実に受けるためには、申請内容をコンサルタントに相談するのも一つの手といえるでしょう。
コンサルタントは書類の内容にアドバイスをくれるだけでなく、公庫の融資窓口の担当者を紹介してくれることもあります。
実は融資を受ける場合、紹介で訪れた方が、話が順調に進むケースが多いのです。
融資で失敗しないために、活用を検討してみるのもよいでしょう。
注意!!融資は一度失敗すると挽回できない
一度融資を申し込んで「融資できない」という結果が出てしまうと、その後すぐに対策を練って再度申し込んだとしても、結果が変わることはまずありません。
そのため、融資の申請は細心の注意を払って行わなければならないのです。
慣れない書類をつくるときは、おかしな点や間違いがどうしても発生しますが、作った本人は専門家ではないのでなかなか気付くことができません。
申請の内容は、第三者にも見てもらいしっかり検証するべきなのです。
また、融資の申請は飛び込みで行くのではなく、コンサルティング会社、会計士や税理士、知り合いの経営者などの紹介を受けてから訪問する方がよいでしょう。
先ほども触れたように、紹介で訪れた方が話をスムーズに進めることができます。
よくわからない相手から「お金を貸してくれ」と言われれば、窓口の担当者も身構えてしまいます。
紹介を受けて訪問すると、これを防ぐことができるのです。
また、紹介元とのお付き合いもあるので、適当な扱いはできなくなるという効果もあります。
銀行とは長いお付き合いになりますから、信頼関係を築くために相手を尊重する姿勢を持たなくてはなりません。
利用できるのは新創業融資制度だけではない
ここでは融資制度の中からもう1つ、「中小企業経営力強化資金」について簡単に紹介したいと思います。
この制度の対象となるのは、新事業分野の創出・開拓をしようという人です。
これから新しいことに意欲的にチャレンジする人にとって、とても有利な融資制度となっています。
中小企業経営力強化資金には、新創業融資制度のような自己資金の要件がありません。
つまり、自己資金ゼロでも利用できるということです。
また、2000万円までなら、無担保、無保証人で融資を受けることができます。
制度を利用するためには、事業計画について認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けることが必要になります。
飲食店の経営にとって事業計画は非常に重要となるので、専門家のアドバイスを得ながら作成できるということは心強いですよね。
自己資金がなかなか用意できないという人は、チャレンジしてみるのもいいかもしれませんね。
日本政策金融公庫には、「新創業融資制度」「中小企業経営力強化資金」以外にも、新規開業時に利用できる様々な制度があります。
公庫のホームページにそれぞれの内容が紹介されていますので、融資を受ける予定がある人は一度調べてみることをオススメします。
開業資金をクリアにし、繁盛店をつくるために
このように、開業するためには、お金の問題をクリアしなくてはなりません。
開業の夢を叶えられる人が、一握りしかいない理由がここにあります。
多くの人は大きな金額を借金することをためらい、はじめの一歩を踏み出すことができないのです。
借金には、よい借金と悪い借金があります。
しっかりとした計画を立て、自分の夢を実現するために借りるお金はよい借金なのです。
融資の審査が通るということは、あなたの事業計画が実現すると金融機関が認めたようなものです。
大きな額に躊躇してしまうかもしれませんが、自信を持って夢を実現してください。