飲食店経営をはじめて、1店舗目で安定して利益が出るようになると、次の店舗の出店することを考える人も多いと思います。
店舗を増やしたいと思う理由は、ひとそれぞれあると思います。
もっとお金を儲けたい人、スタッフがキャリアップできるように店舗数を増やしたい人、スタッフに独立してほしいから任せられるお店を増やしたい人など様々です。
理由は何にせよ多店舗展開を考えるなら、なぜ多店舗展開するのか、いつまでに何店舗を展開するのか、どこに出店していくのか、といったことを自分の中で整理しておく必要があります。
「いつか店舗が増えたらいいな」といった考え方では、店舗を増やしたところできっと行き詰ってしまうことでしょう。
多店舗展開する場合も、ゴールは明確にもっておくべきなのです。
あなたを守る、店舗経営の防波堤とは?
飲食店オーナーの中には、1店舗のままでいいという人もいます。
しかし将来のリスクを考えると、飲食店経営をするなら多店舗展開を検討した方がいいと考えます。
なぜなら複数の店舗の経営は、危機から身を守ってくれる防波堤になってくれるからです。
何か大きな危機を迎えた場合においても、複数の防波堤を用意しておくほうが安心だといえるのです。
1店舗の経営が危険なワケ
1店舗しか店舗を経営していない場合、例えば近隣に人気の競合店がオープンすると、それだけでお客様が半減するおそれがあります。
競合店ならまだしも、大型ショッピングモールなどができると、小さな店舗では太刀打ちできません。
その他にも、火災や自然災害、食中毒などの風評被害など、予期せぬアクシデントはいくらでも考えられます。
何十年も環境が変わらないなんてことはありえないのです。
多店舗展開しておけば、一つの店舗が危機に陥ってもその他の店舗でカバーすることができます。
仮に、1店舗閉店することになったとしても、事業を続けることはできるのです。
これが経営の防波堤です。
複数の店舗は、あなたの店舗経営のリスクヘッジになります。
危機が押し寄せてきたとしても、複数の店舗があることでダメージを軽減することができるというわけです。
多店舗展開であなたの生活も守る方法
飲食店経営においては、お店の経営が個人の生活に直結する場合がほとんどです。
店舗経営がうまくいけば個人の暮らしも潤い、経営がうまくいかないと個人の生活も厳しくなります。
このことを考えると、多店舗展開は生活の防波堤にもなります。
店舗経営のゴールと同じように、個人の人生のゴールを決めることも大切です。
自分の状況を考えながら将来の生活のシミュレーションすることで、今後どのように店舗経営していくべきかが見えてくるのです。
1店舗しかないと未来は厳しい
まず1店舗で生計を立てるライフプランシミュレーションを考えていきます。
30歳でお店を開業する場合、1店舗の経営で、将来引退生活を送ることができるでしょうか。
お店の売上から経費などを除いた収入が年間600万円とします。
経営が順調で、この金額を引退まで維持できたとすると、途中で子どもの教育費などの支出が増えることはありますが、子どもの独立後は貯金の額も増えます。
しかし、65歳で引退し年金生活をスタートさせると、当然生活の収支は一気にマイナスになります。
足りない部分は、貯金を取り崩しながら生活を維持していくことになります。
しかし、70代に入ると貯金は減り、生活が厳しくなります。
しかも、30年以上1つの店舗の経営が順調ということは現実的ではありません。
お店に何かアクシデントが起き、出費がかさむこともあれば、思うような売上げがあがらないこともあるでしょう。
貯金も思うようにできないかもしれません。
つまり、余裕をもった生活を維持するためには、65歳をすぎても現役で働かなくてはならない可能性が高いということです。
1店舗しか持っていない場合、簡単に現役を引退することは難しいのです。
多店舗展開なら余裕が持てる
では、次に多店舗展開をした場合のシミュレーションです。
開業当初の収入は先ほどと同じ600万円です。
ただし、今回は翌年から1年に1店舗ずつ店舗を増やしています。
店舗の増加とともに売上も増え、それに伴って収入も増えていきます。
例えば、50歳で経営しているお店を人に任せてプチ引退したとしても、自由な時間を手に入れながら生活を維持することもできます。
しかも、本格的に引退する時点でもかなりの金額を貯金することもできます。
引退後も生活の質を落とさずに生活することができるでしょう。
もちろん多店舗展開をすればするほど、事業としてのリスクは高まります。
しかし自身の生活のことまで考えれば、一概に多店舗展開だけにリスクがあるとは言えないかと思います。
1店舗の経営では収入も貯金も増やせる限界があります。
個人事業主には退職金もありません。
つまり、個人事業主で1店舗の飲食店を経営するだけでは、将来支給される年金だけで生活を維持することができないのです。
複数の店舗を経営していれば、将来の生活資金を確保しやすくなります。
ちなみに、公益財団法人生命保険文化センターの平成25年度「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人がゆとりある老後を送るためには、月額35.4万円必要だそうです。
仮に60歳でリタイヤし、85歳まで生きたとして合計金額を計算すると、
35.4万円×12力月×25年=1億620万円
あなたが作ろうとしているお店で、これだけの資金を貯金することができると思いますか?
生活費の不足分を年金だけでカバーできるでしょうか?
ゆとりある引退生活を送るためには、早めに将来の展開を考えておく必要があるのです。
どんぶり勘定は多店舗展開の敵
複数の店舗をもつことは、経営や生活の防波堤を作る意味で取り組みたいことではありますが、何も考えずはじめるのはとても危険です。
店舗を作るには大きなお金が必要です。
それは2店舗目も一緒なのです。融資を受けるなら、店舗が増えるごとに返済金額も大きくなります。
何も考えていないと、リスクが高まるだけなのです。
どんぶり勘定とはなにか?
例えば、飲食店のオーナーさんにはこんな方がいらっしゃいます。
「お金儲けなんて関係ない。自分の納得のいく味をお客さんに提供する」
「味がよければお客さんはついてくるのだから、料理だけ追求すればいい」
飲食店は基本的に現金商売です。
このような考えで経営していても、お客様の飲食代がその日に現金で入ってくるので、何となく儲かっているような気持ちになってしまいます。
実際、楽観的に考えて、細かいお金の出し入れを気にしていないオーナーも少なくありません。
これが、いわゆる「どんぶり勘定」のお店です。
どんぶり勘定とは、大雑把なお金の出し入れをすることですが、この感覚を持ったままでは店舗数を安全に増やすことは不可能です。
手元にある現金は、家賃や光熱費、食材や消耗品の支払い、人件費などに使わなくてはなりません。
さらに利益が出ると、税金を納める必要もあります。
きちんと管理をせず大雑把に使っていたら、経営はいつまでも不安定なままです。
お金の管理をきちんとしていないと、次の出店のための資金を貯めることもできませんし、今のお店の経営も下手をすると危うくなります。
そうなると、料理の味にこだわることもできなくなってしまうのです。
店舗展開を考えるなら、「カネ」はとても重要です。
味を探求するだけでは、店舗展開をすることはできません。
職人気質のこだわりを、経営全体にも向けてみてください。
どんぶり勘定で出店してはいけない理由
例えば、2店舗目に大きなお店を選んでしまうと初期投資も大きくなります。
これを1店舗目と同じ感覚で出店してしまうと、様々な不具合が発生することになります。
大きな店舗では、それだけスタッフや物資が必要になります。
さらに、販促も積極的に行わないと満席にすることも難しいでしょう。
これまでよりも大きな初期投資が必要な出店を勘に頼って決めると、大きな失敗を招く危険を高めます。規模が大きい2店舗目が赤字になると、規模の小さい1号店の黒字では補填しきれない事態に陥る可能性が高いのです。
勘頼りで出店を進めるのはとても危険なことなのです。
このような事態を防ぐためには、まず1号店の黒字がある程度あり、安定していることが必要になります。
そして、2号店が失敗したときを考え、1号店だけで2号店の赤字分や閉店時の原状回復費用、借入金返済などの負担を負いきれるかどうかを事前にシミュレーションする必要があります。
シミュレーションで安全性を判断した上で、次の一手を考えなくてはならないのです。
店舗が軌道に乗るまでの時間を乗り切る方法
出店前から失敗したときのことを考えるのは、あまり面白いことではないかもしれません。
しかし、実はこれがとても重要なことなのです。
開業してから事業が軌道に乗るまでには、ある程度の時間がかかります。
日本政策金融公庫の調べによると、約6割のお店が軌道に乗せるまでに半年以上かかっているというデータもあります。
もちろん開店当初は話題性もあるので、お客さまの数が増えることも期待できます。
しかし反対に、認知度が低く客足が伸び悩み、予想どおりの売上が上げられないことも考えられるのです。
新規出店を考えるなら、お店が安定期にたどり着くまで経営を維持できるように備えておく必要があります。
ゆとりある資金が必要不可欠
新規出店を考える際には、余裕のある資金を準備しておかなくてはなりません。
これは、開業の時と変わりはないのです。
他のお店の利益があると油断していると、痛い目を見ることになりかねません。
例えば、2号店の出店に1500万円必要だとします。
手持ちの資金は500万円です。
できるだけ借入金を減らそうと考えると、銀行から1000万円融資してもらえば出店することができます。
しかし、このような計画で出店してしまうと、お店が軌道に乗るまでの運転資金に余裕がありません。
運転資金が不足した後、あわてて追加の融資を申し込んでも、この状況では融資が下りない可能性のほうが高いのです。
結果、2号店が重荷となり1号店の経営まで圧迫してしまうことになりかねないのです。
これを、手持ちの資金には手を付けず、余裕も持たせて2000万円融資をしてもらい出店したらどうなるでしょう。
手元には1000万円の運転資金が残るので、お店が軌道に乗らなくても、半年以上持ちこたえることができます。
その間に、お店のオペレーションの教育や販促活動を行うこともできるのです。
出店の際、ゆとりのある資金を準備することで、お店も軌道に乗せやすくなるということです。
出店時に立ちはだかる資金調達の壁
開店当初は様々なアクシデントが起こることが考えられます。
また、思うようにお客さまが来店してくれるかどうかもわかりません。
このような理由で想定通りに売上や利益が上がらなければ、そのマイナス分をカバーするための資金が必要になります。
1号店が順調ならその利益から補填できますが、最悪の場合それだけでは足りない場合も考えられます。
そうなると、手元の資金を使わなければなりません。
手元資金を2号店の出店に全部つぎ込んでしまうと、万が一のとき使えるお金が手元にありません。
そうなると、追加融資を申し込むことになりますが、このような状態では貸してもらえない可能性のほうが高いでしょう。
飲食業界は現金商売が基本なので、運転資金が足りなくなる状態は赤字と見なされます。
誰だって赤字のお店に積極的にお金を貸したくありません。
そのため、飲食店経営ではなかなか運転資金を融資してもらうことはできないのです。
もし借りられるとしても、それなりに厳しい条件になってしまいます。
その代わり、出店資金は比較的簡単に融資してもらえます。
そのため、リスクも想定した出店資金を融資してもらうことが大切です。
簡単に言うと、借りやすいときにできるだけ借りておくとよいのです。
出店準備を計画する具体的な方法
店舗をオープンしてから軌道に乗るまで、半年以上はかかると見積もっておく必要があります。
しかし、お店の売上がどうであれ、店舗を営業するにはお金が必要です。
新規出店をする場合には、その店舗が軌道に乗るまでのことも考慮した計画を立てる必要があります。
ほとんどのオーナーは銀行から融資を受けて出店しますから、出店すればお店の状況とは関係なく銀行への返済は発生します。
現在の会社の状況で出店してよいのかどうか、数字を見ながら考えていきましょう。
手元資金がないと危険
手元の資金を2号店の出店準備で使い果たしてしまい、ほぼゼロの状態でスタートした場合を考えてみます。
手元資金がないと、2号店の赤字は1号店の利益で補うしかなくなります。
例えば、2号店は出店1カ月目で90万円の赤字、1号店の黒字が100万円とすると手元に残るのは10万円です。
これではすぐに赤字をカバーしきれなくなり、手元の資金不足に陥ってしまいます。
このような状況を避けるには、手元にお金を残して出店しなくてはなりません。
しかし、全額融資で賄いたいと思っても、2号店の出店資金を全額融資してもらえるとは限りません。
ある程度手元資金を使わなくてはならないことも十分ありえます。
例えば、2号店の出店資金として2000万円が必要で、銀行からの融資は1500万円が限界だった場合、出店するには手元資金の500万円を使う必要があります。
この500万円を使ったことで手元資金にまったく余裕がなくなった場合、2号店がうまくいかなければ手元にはカバーできる資金はありません。
その結果、閉店するしかなくなってしまいます。
一方、手元の500万円を使った上で資金にゆとりがあれば、2号店がうまくいかなくても、ある程度は手元資金でカバーできます。
つまり、2号店を出店する前提として、手元資金に余裕がある必要があるのです。
既存店が黒字だからといって安心はできない
次に、1号店の収支が安定していない場合を考えてみます。
一見1号店が好調のように見えて、実は売上が安定していないなんてことは良くあります。
例えば、1ヶ月目は100万円の黒字、2ヶ月目は50万円の黒字のお店を考えてみます。
この状態で2店舗目をオープンし、毎月90万円の赤字が出るとすると、1ヶ月目は1号店でカバーできても、2ヶ月目には資金不足に陥ります。
手元資金がなければ、この時点でアウトというわけです。
2号店が軌道に乗るまでは、資金繰りは1号店が頼りになります。
その1号店の収支が不安定なら、先の計画が立てられないのです。
1号店だけなら毎月黒字を出しているので安定しているように見えますが、ここに落とし穴があります。
2号店を出店するなら、1号店の収支は安定している必要があるのです。
最悪の場合をシミュレーションして備える
手元の資金にゆとりがあっても、赤字が大きすぎるとカバーしきれなくなります。
これは2号店の規模を大きくしてしまったときに良く起こる問題です。
例えば、手元資金が200万円あったとしても、規模の大きな2号店が1ヶ月で200万円の赤字を出すと一瞬でなくなってしまいます。
以降は、1号店の利益で2号店の赤字をカバーしなくてはならなくなるのです。
しかし、2号店のほうがお店の規模が大きい場合、1号店の収支だけでは赤字分をカバーしきれません。
こうなると、スタートから数カ月で資金不足になってしまいます
1号店が順調だと、2号店の規模を大きくしたくなる気持ちは分かります。
しかし、規模が大きくなればお店の維持費も大きくなります。
つまり、うまくいかなかった場合のリスクが大きくなるのです。
2号店がうまくいかなかった場合、規模の小さな1号店の収支だけではおそらくカバーしきれないでしょう。
このような事態を防ぐためにも、新店舗が不調だったときのシミュレーションをしておく必要があるのです。
撤退するにもお金が必要
もし、新しい店舗がうまくいかず撤退したとしても安心はできません。
撤退するときは、原状回復などでまとまった支出が発生します。
さらに、閉店しても出店時に借りた融資は返済していかなければなりません。
最悪の場合、1店舗で2店舗分の開業費用を返済しなければならないのです。
このような状態になると、銀行への返済もままならない状態に陥ってしまいます。
そのため、閉店すると同時に銀行に融資の返済を一旦ストップしてもらう、という選択肢も検討しなくてはなりません。
ただしこれをやってしまうと、しばらくは融資を受けることはできなくなってしまいます。
新規出店においては、余裕資金が最大のキモとなります。
既存店が十分やっていけるだけの資金を差し引いて余裕資金がうまれないなら、まだ新規出店は早いということです。
計画的にお金を貯め、土台を固めながら進めなくてはならないのです。
利益と手元のお金の混同が失敗の元
ではここからは、新規出店を見据えた資金を貯める方法を考えていきましょう。
飲食店は、お金の面から見れば投資と回収を繰り返すビジネスといえます。
店舗や食材などに投資を行い、調理した料理を提供することで回収を行います。
投資よりも回収が上回れば儲かり、逆になれば損をしたということになります。
投資したものがいつまでも回収できなければ、余裕資金を貯めるどころかお店を潰してしまうことになってしまいます。
投資をきちんと回収していくためには、まずお金の動きを把握することが重要です。
お金の動きを見ていると、「利益は出ているのに手元に現金がない」という現象がよく起こります。
利益が出ていれば手元にお金が残るはずなのですが、なぜこのようなことが起こるのでしょう。
その原因を見ていきましょう。
なぜ、利益がでてもお金がないのか
利益が出ているのに手元に現金がない主な原因は、現金で仕入れていることにあります。
例えば、1500円で販売する品物を1000円で仕入れ、それを現金で支払ったとします。
その時点ではまだ売れていないので、手元には支払いに使う1000円はありません。
つまり、支払いに使う1000円をどこかからもって来なければいけないのです。
これを防ぐためには、掛け仕入れで翌月末に支払う契約をするという手があります。
先ほどの例の場合、実際に1500円で売れた後に1000円を支払うので支払うお金も準備できます。
これにより、日々のお店の営業もスムーズに進むというわけです。
同じお金を扱うのなら、お金の出ていくタイミングはできるだけ遅い方が、資金繰りが楽になります。
現金仕入れにするなら安くしてくれるという業者もいるかもしれませんが、金額の安さだけに捉われずベストな支払いのタイミングを考えるようにしましょう。
帳簿上の利益は手元の現金ではない
さらに言うと、仕入れや経費の支払いを終えても、すべての現金が手元に残るわけではありません。
例えば、現金売上が100万円上がって、そこから仕入と経費を支払い20万円残ったとします。
さらにここから借入金の返済を行わなければなりません。
返済が15万円あったとすると、手元には5万円しか残らないのです。
しかしこの場合でも、帳簿上では20万円の利益があることになっています。
つまり帳簿上の利益が、そのまま現金で残っているわけではないということです。
このようにして「利益は出ているのに手元に現金がない」という現象は起こります。
利益はいくらあって、手元のお金がいくらあって、その違いはいくらで、原因は何なのか、これが分からないと手元の現金が全くないなんて事態にもなりかねません。
利益が出ていてもお金がなくなれば倒産です。
これを「黒字倒産」といいます。逆に、赤字であってもお金があれば倒産しないのです。
倒産を防ぐためには、日々のお金の動きをきちんと把握しておく必要があります。
お金の流れをキャッシュフローといいますが、これを把握しておくことが経営の土台を作るために必要不可欠なのです。
ゆとりを持った返済をするために必要なこと
店舗展開をする際、ほとんどの人が銀行から借り入れをしますが、その条件は誰もが一緒というわけではありません。
あなたのお店の経営状況などによって、返済期間や金利も変わってくるのです。
店舗展開をしていく上では、借入金の返済計画もきちんと考えておくことが重要です。
借入れ条件一つで資金繰りは大幅に改善する
短い返済期間で融資を受けると毎月の返済金額が大きくなり、その支出がお店の運転資金を圧迫することになります。
すると、たとえ新規店舗が利益を上げていたとしても、返済のせいで資金繰りが厳しくなるおそれがあるのです。
出店したい気持ちが先走ると、自分の現状をつい忘れてしまいます。
そして判断を誤り、会社を倒産させてしまった経営者はたくさんいるのです。
売上と返済のシミュレーションは、融資を受ける前にできるものなので、必ず借りる前に検証しなくてはなりません。
検証さえしておけば、借りた後に月々の返済額に困ったり、資金繰りが苦しくなったりすることはなくなるのです。
特に短い返済期間は、あなたを苦しめる原因となります。
予定より短い期間を銀行から提示された場合は、よく考えてから行動するようにしてください。
手元にお金を残す4つのシンプルな方法
繰り返しになりますが、新規出店で最も重要となるのは余裕資金の確保です。
そして、ゆとりある資金をためるために、自分の手元にお金が残るように資金繰りをしていかねばなりません。
手元にお金を残す方法は、実はとてもシンプルです。
その方法は「入金を多くする」「入金を早くする」「出金を少なくする」「出金を遅くする」という4つになります。
それぞれもう少し細かく見てみると、、、
・入金を多くする…売上を増やす、助成金・補助金を受給する、銀行から融資を受ける
・入金を早くする…掛け売上をしない、掛け売上を早く回収する、現金決済にする、クレジットカードの入金時期を早める
・出金を少なくする…節税する、コスト削減する
・出金を遅くする…短期借入から長期借入にシフトする、掛仕入にする、掛仕入の支払時期を延ばす、在庫を減らす、〆日が過ぎてから仕入れを行う、支払日を回収日の後にする、前払い・立替払い・仮払いを減らす、リース取引を活用する
このような方法を取り入れることで、資金繰りを楽にしていくことができます。
これとは逆に、出金のタイミングが入金よりも早いと、手元の現金が不足して資金繰りが苦しくなります。
入金はできるだけ早く、出金はできるだけ遅く、これが安定して経営する秘訣なのです。
また、入金を多くするにはいくつか方法がありますが、いずれも今すぐにできるものではありません。
それよりもコストを見直すなど、出金を少なくする方法から検討した方が早い結果を期待できるでしょう。
経営はスタートすると、その後は止まることはありません。
もし止まるとすれば、それは倒産するときです。
あなたの飲食店が止まってしまうことのないよう、日々のお金の動きをしっかり見て、資金繰りで困ることのないよう工夫してください。
即効性のあるコスト削減方法
入金を増やしたり早めたりすることは、実はあまり現実的ではありません。
入金を増やすことは長期的にみれば重要ですが、明日突然お客様で溢れる店にすることは不可能です。
また、入金を早めることは取引先次第です。
要求に応じてくれるかは分からないのです。
そこですぐに取り掛かるなら、無駄な出費を抑える方が確実に資金繰りをよくできます。
当たり前のことですが、経営者の中にはコストに目を向けていない人が多いのです。
経費を見直すと資金繰りが楽になる
お金のことは苦手だからと、お金の管理をスタッフに任せきりの経営者は少なくありません。
しかし、自分でもお金のことを把握しておかないと、経営の問題点を見つけることができないのです。
そして資金繰りが悪いのは売上が低いからだと決め付け、なけなしのお金をチラシなどに使ってしまいます。
このチラシが効果を発揮しないと手元の資金がさらに減り、より資金繰りが苦しくなってしまうのです。
まずは、自分のお店の経費を見直さなくてはなりません。
通信費、水道光熱費、家賃、クレジット手数料などなど、削減できる経費は意外と多いものです。
ぜひ一度見直してみましょう。
コスト管理こそあなたのお店を繁栄させる
入金を改善するには時間がかかりますし、成功するかどうかもわかりません。
それに比べて、出金を管理するのは、基本的には自分たちの判断でできます。
つまり、やろうと思えばいつでもできるのです。
飲食店経営において必須の費用は、通信費、水道光熱費、家賃などが考えられます。
これらも検証すれば削減することができる場合が意外と多いのです。
毎月発生する費用ですから、少しずつでも削減できればトータルでかなりの削減効果が期待できます。
例えば利益率が50%のお店では、1万円経費が削減できると2万円売り上げることと同じ効果があるのです。
つまり、毎月1万円のコストを削減できれば、年間で約24万円の売上を獲得したことと同じことになるのです。
店舗展開を成功させるために
飲食店経営者の中には、自分のお店でありながら原価や経費を細かく把握していないという人も多いです。
しかし、お金の管理を人に丸投げするのは、経営者という役割を放棄しているようなものです。
経営者としての役割を果たせていないのに、多店舗展開することなど不可能といってもいいでしょう。
あなたが多店舗展開で成功するためには、基盤となる余裕資金を持たなくてはなりません。
そして、「カネ」の土台を築くためには、お金と真剣に向き合うことが大切です。
どんぶり勘定ではなく、お金の動きをしっかり意識して失敗するリスクを極限まで減らしていきましょう。