美容室を開業するためには多額の資金が必要です。
お店の内装、外装を工事するだけでも、少なくとも数百万円はかかります。
この資金をすべて自分で貯めて準備するのはなかなか難しいでしょう。
そこで、開業するほとんどの人は、金融機関から融資を受けて開業します。
融資を受けるといっても、その方法は様々です。
そこでここでは、資金調達にはどのような方法があるのか、お金を借りるためにはどのような条件があるのか見ていきましょう。
スムーズに融資を受けるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
適正な開業費用を把握し経営を楽にする方法
資金調達の方法を考える前に、開業費用にいくらかかるのか把握しておかなければなりません。
開業費を適当に見積もってしまうと、後でお金が足りないなんてことになりかねないのです。
まずはどのような費用があるのか、何を基準にその額を決めるのか、その判断基準を紹介していきましょう。
まずは適正な予算を把握する
開業費用の予算は、営業利益と現金収支のシミュレーションをもとに決めていきます。
開業費用は、減価償却費として毎年経費として計上し、返済金として月々返済していきます。
そのため、開業費用が高くなれば経費や返済額も高くなります。
そして当然ですが、経費が高いと利益は減り、返済額が高くなれば残る現金は減ることになります。
安定した経営を続けていくためには、毎月しっかり利益を出し手元に現金を残さなければなりません。
開業費が高すぎると、これが難しくなります。
そこで、適正な開業費用を算出するため、まず収支シミュレーションを作成します。
計画している店舗の場合、減価償却費をいくらに抑えれば目指す利益が出るのか、返済額がいくらまでなら目標額が手元に残るか、この2つを計算して適正な開業費を把握するようにしましょう。
無理のない設備資金の見積もり方
適正な開業費が分かったら、内訳を整理しながら全体像を把握しましょう。
開業資金は大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。
まずは、設備資金について見ていきましょう。設備資金の融資を申し込む際は、各設備の正確な見積もりが必要になります。
そのため、各業者から見積もりを取り、正確な金額を把握しておく必要があります。
それでは、美容室開業における代表的な設備資金について紹介していきましょう。
①物件の賃貸借契約における店舗保証金
店舗保証金とは、借主が貸主に預けるお金です。家賃を滞納した場合の担保金や、部屋の損傷を復旧する場合などに使われます。
店舗に問題がなければ、退去後に返還されます。
店舗保証金は、エリアの特性や貸主の意向によって金額が大きく変動します。
開業資金の中で大きな割合を占める可能性もあるので、必ず予算内の金額であるか確認しましょう。
②内外装工事費
美容室の場合、内外装工事費用は物件の状態によって大きく変わります。
例えば、給排水、電気、ガス等も通常より大きな容量が必要になり、設置する設備の規模によって費用も大きく変わります。
選んだ物件の状態がよく、そのまま設備を利用できれば費用を抑えることができます。
しかし、設備を一から作る場合や、大幅改修が必要な物件の場合は工事金額が高額になります。
費用を抑えて工事をしたいという場合は、美容室に必要な設備が整っている物件を探すほうが得策といえるでしょう。
③美容器具費
美容器具費には、美容室を営業するうえで必要な器具を計上します。
例えば、セット椅子、シャンプー台、加温器、スチーマーなどです。
美容器具費は、美容室の規模や器具のグレードによって大きく変動します。
具体的に商品を選び、必要な数を把握した上で、業者に見積もりを依頼して正確な金額を確定しましょう。
④設備費
美容室における設備費とは、施術に必要な器具以外の設備を指します。
例えば、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、待合の椅子などが設備費に計上されます。
商品を選択したうえで業者に見積もりを依頼し、正確な金額を算出しておきましょう。
余裕のある経営を可能にする運転資金の見積もり方
設備資金は形のあるものが多いですが、運転資金に分類されるものは形のないものがほとんどです。
次に、美容室開業における代表的な運転資金について紹介していきましょう。
①物件の賃貸借契約における費用(保証金以外)
物件の賃貸借契約における費用には、礼金、仲介手数料、前払い家賃、保証料も必要になります。
これらの費用は、融資を受ける際は運転資金の項目になります。
②広告宣伝費
広告宣伝費には、ホームページ、チラシ、メンバーズカード等の制作費や配布費用などが該当します。
目標売上を達成するためには、どれだけの施策を打てばよいかを検討しながら設定する必要があります。
ただし、初期投資予算内に収まるように注意する必要があります。
③人材採用費
新たにスタッフを募集する場合、発生する費用が人材採用費です。
求人誌掲載のための費用や、人材紹介業者へ支払う費用が該当します。
④開業材料費
開業材料費は、カラー剤、パーマ剤、シャンプー剤等の「水物」と、パーマロッド、カラー用の刷毛、カップ、クロスなどの「消耗品等」に分類されます。
開業材料費も、メーカーやディーラーにより金額が大きく異なります。
また業者によって、商品注文から納品されるまでの期間も大きく異なります。
ディーラーが直接美容室に納品する場合は、週に1回等の定期納品となります。
この場合、各業者の取引条件を比較し、過剰在庫や在庫不足を引き起こさない体制を整える必要があります。
確実に融資を受けるための金融機関選びとアプローチ
美容室開業で使用される資金調達先は、日本政策金融公庫、制度融資、リース・割賦・レンタルの3つに大きく分けられます。
ここからは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
国からの融資である日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、100%政府出資の金融機関です。
スタートアップにおける資金調達では、最もポピュラーで良心的な資金調達先となります。
保証人や担保について相談に応じてもらえる、長期返済でも利息は固定金利、美容室の営業許可を取る前に融資を受けられるなど、美容室開業者にとってメリットの大きい金融機関です。
各地方自治体による制度融資
制度融資とは、各地方自治体が行なっている融資あっせんで、中小企業や開業を目指す人のサポートを目的とした制度です。
各地方自治体と信用保証協会、指定金融機関の三者協調のうえに成り立っています。
各地方自治体の制度融資を受けるには、信用保証協会の保証が必要です。
信用保証協会は、経営者の人物、資金使途、返済能力等を総合的に判断して保証の可否や保証金額を決定します。
制度融資の内容や審査基準は、各地方自治体によって異なります。
利用を検討する場合は、事前に商工会議所や取扱い金融機関で内容を確認しておいた方がいいでしょう。
民間会社によるリース・割賦・レンタル
美容室の開業資金調達でよく使用されるのが、リースや割賦、レンタルといった方法です。
それぞれに内容が異なりますので、仕組みを理解して利用しなくてはなりません。
公庫や制度融資に比べ、審査基準や手続きは緩やかですが金利は高めとなります。
まず割賦とは、設備等を分割で購入する方法です。
購入するので当然所有権は開業者にあり、資産の金額を減価償却費として取り扱います。
対して、リースとレンタルは設備を賃貸します。
そのため、所有権は取引先にあります。開業者が選んだ設備を代理購入しそれを貸し出すのがリース、在庫の中から選んでもらい貸し出すのがレンタルです。
レンタルの場合中途解約できますが、リースの場合は基本的に不可能となります。
それぞれにメリット、デメリットがあり、金利も様々です。
それぞれの特徴を把握したうえで、どの方法がベストか判断するようにしましょう。
美容室開業後に、苦しい思いをしないために
開業費用の見積もりが甘いと、希望通りの融資が受けられないおそれがあります。
融資の審査は、それほど甘いものではないのです。
また、融資が受けられたとしても、開業後すぐに資金繰りが苦しくなるなんてことになりかねません。
開業直後から無理のない経営を実現するには、ゆとりのある開業費を準備する必要があります。
そのためには、適正な開業費を把握することが不可欠なのです。
ぜひ、あなたのお店を実現するに必要な費用を計算し、無理のない開業を目指してください。