現在では、ほとんどの企業が何らかの顧客名簿を管理しています。
しかし、顧客名簿を具体的に有効活用できている会社は意外と少ないのが現状です。
ポイントカードを導入するだけで顧客の囲い込みに成功する企業もありますが、割引カードを導入してもまったく顧客が増えず、粗利率を落とすだけの企業もあります。
顧客管理で売り上げを最大化する
対象となる顧客を分析して管理することは、どの企業にも必ず必要なことです。
しかし、それによって求める成果は違いがあります。
何のために顧客管理をするのか、しっかりとその目的を持って顧客管理を行なうことが必要になります。
そこで、顧客管理の基本を考えていきましょう
顧客管理を行なう三つの目的
顧客管理を行なう目的は、以下のようなものがあります。
①収益を上げるための顧客の購買行動の管理
まず、自社の本当のお得意様を見極め、お得意様に見合ったサービスが効率的に行なえるように管理することが必要です。
顧客の流出を防ぐための、中・長期的な施策として行なう顧客管理は、現在の自社の顧客からより収益を上げるための手法となります。
つまり、お客様により多く、より早く買っていただくための顧客管理です。
②顧客との関係をより強固に築くための関係管理
次に、お客様との関係を深くするには何が必要かを考えて実行していきます。
ここには、関係が途切れそうなお客様への対応も含まれます。
つまり、お客様により満足していただくため、より期待していただくため、より支援していただくための顧客管理といえます。
顧客との関係性を深める施策は簡単にはできません。顧客の期待値を上げ続けることは、企業に対応力が求められます。
その結果、現場スタッフ個人の資質に任せた運営となってしまい、具体的な施策を打つことができません。
一方で、顧客との関係をより良好にするための仕組みを開発し、管理している企業も多く存在します。
旅行会社の会員クラブやメールなど、お客様に近づくための努力は様々です。
③顧客分類で適切な商品を供給する客層管理
最後に、お客様の年齢や趣味、家族構成など多岐にわたる情報をチェックし、自社のターゲットを掘り起こしていきます。
これは、お客様の購買行動や志向に合った商品やサービスの提供のために行なう顧客管理です。
顧客の価値がすべて均一であることなどあり得ません。
そこで必要となるのは、すべての顧客に均一のサービスをすることが有効かどうかという視点と、求められている商品が同じかどうかという視点です。
まず、顧客を管理する目的とお客様が望んでいるものを、十分に把握して管理の手法を考えなくてはなりません。
顧客名簿に眠る利益を掘り出す方法
「自社の上得意2割が、売上げの8割を占める」というのが、よく言われる顧客のパレート効率です。
実際には、商圏がはっきりして、顧客の流出が限定されたリピート購入商品を扱う業態でないと、この傾向は出にくくなります。
顧客管理に際しては、まずは自社の上得意の状況を正確に把握することが重要です。そのうえで、自社流の顧客ピラミッドを想定していきます。
顧客ピラミッドの考え方
顧客の固定客化は、上得意客から収益を上げることを第一の目的として行なわれます。極端に言うと、店舗の活動は固定客を増やす活動といってもいいでしょう。
お客様の段階に応じて「未来店客、一見客、知人客、友人客、信者客」と表わし、顧客に一段ずつ上ってもらうことを考えます。
たとえば通販の場合、未来店客にチラシ等で案内をするときの反響率は0.01~0.1%と、収益の出る比率ではありません。
しかし、これに反応していただいた一般名簿客にDMを打つと、反響率は0.3~3%に上昇します。
そのうえに登場するのが定期購読型の大型DMで、こちらは3~7%まで上昇します。
ここまできて、やっと収益の上がる顧客をつかんだことになります。
これが、通販会社の優良名簿となります。
さらに、そのうえで管理されているものが上得意名簿です。
この名簿の反響率は25%以上で、信者とも言えるお客様となります。
既存の固定客の価値を高める
では、あなたの会社の名簿について考えてみましょう。
まず、自社の業績の8割を担う顧客を割り出します。
次に、年間に使う販促費と顧客管理費を計算します。
その費用の8割を上得意客に振り分け、投入できる経費を計算します。
もちろん、新規顧客を獲得するために、未来店客に販促費を振り分けることは大切です。
しかし、既存の固定客にも販促を行い、離れないようにする必要があります。
顧客名簿で管理する項目とは
目的に応じた管理項目
顧客管理を行なう際に管理すべき項目は、目的に応じて以下のようなものがあります。
1購買行動管理(RFM)
・最終来店
・来店頻度
・購入金額
2関係管理
・アフターケア状況(未購入者、購入後、クレーム)
・フォロー状況(使用期間フォロー)
3客層管理
・RFM(年齢、性別、収入)
・顧客の情報(家族構成、地域、趣味、購入履歴、職業、誕生日、持家、間取り、話題、服装、サイズ)
自社と顧客との関係性でも管理項目は変わる
顧客管理は、現場での具体的な行動を伴わないと、手間がかかるだけで結果が伴いません。
そのため、自社の置かれた状況や顧客との関係性によって、管理項目を考える必要があります。
たとえば、大型家電店と町の電気屋では、管理すべき情報は変わってきます。
お互いに顔と名前がはっきりした関係で起こるサービスの場合、より個別の対応が求められるのです。
お客様の年齢や商品知識を踏まえた販売提案はもちろん、お客様の家の間取りや電力、家電製品の耐久年度まで把握する必要があります。
また、設置サービスのときには、お客様との会話も必要になるでしょう。
同様に、クレーム顧客への対応も異なります。
量販店の場合、クレーム顧客の名前より、問題となった内容への対策を優先する必要があります。
なぜなら、お客様は上顧客としての特別な対応ではなく、いつも通りのサービスを求めているからです。
しかし、クレームの内容が上顧客としての対応を求められている場合、それが可能かどうかを随時判断しなくてはなりません。
商品の品揃えや接客の質など、できるだけ対応する姿勢がないと、そのお客様は自社に期待しなくなってしまうのです。
そのため、管理項目を決めるにはまず、自社が必要とする顧客情報が何かを確認する必要があります。
たとえば、より貢献度の高いお客様により手厚くフォローしたいと思うなら、顧客の「購買行動管理」を行なう必要があります。
さらにお客様に近づいて、よりご満足いただけるサービスをしたいと考えるなら、「関係管理」まで行う必要があるでしょう。
それ以上にお客様の環境や嗜好を理解し、よりお客様に合った商品やサービスの提供を考えているなら、「客層管理」まで行う必要があるといった感じです。
本当に価値のあるお客様を見つける方法
顧客管理を実践する基本モデルとして、RFM分析という方法があります。
「RFM」とは、顧客の購買行動のうち、最終来店(Recency)、来店頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の頭文字で、これらに注目して分析を行ないます。
顧客の購買行動は、それぞれに差異があります。そのため、顧客の価値はそれぞれ異なるという認識を、まずは持たなければなりません。
LTVという切り口
システムを運用して顧客管理を実行しようとすると、その他大勢の名簿管理が問題になります。
たとえば、遠方からたまたま買物に来たお客様、婦人服売場の男性顧客、5年間来店のない顧客など、システムは多くの名簿を網羅しています。
可能性がゼロではないにしろ、このような顧客を管理するために時間や費用を使うのは無駄といえるでしょう。
いったんばっさりと切ってしまうことも必要となります。
顧客管理でまずポイントとなるのは、自社にとっての顧客の価値です。
毎週来店してくれて購入金額の高いお客様と、半年前に一度購入されただけのお客様では会社にとって価値が違いますよね。
考え方を変えると、「そのお客様は今後、自社にとってどれだけ期待できるか(LTV=Life Time Value)」ということになります。
その期待度により、顧客に提供できるサービスの内容は異なるのです。
固定客化の目的を数字に置き換える
顧客管理システムの運用で大切なことは、固定客化による成果を具体的な数値で評価することです。
「顧客価値」のことを考えると、「生涯顧客の創造」も問題となりますが、生涯顧客は計画的に作ることはできません。
あくまで結果として現われるのです。
顧客管理を具体的に現場に落とし込むのであれば、「3年のうちに1人当たり100万円の成果」、などの基準がなければ能動的な管理はできません。
では、自社にとって上得意と呼べる顧客はどのように見極めればいいのでしょう。
その方法は、実際に自社の優良顧客を調べるのが手っ取り早く妥当です。
それは、次の三つの視点で考えることができます。
①パレート効率からの分析
自社の上得意層の年間購入平均で求める金額。おおむね自社の販売形態での上限層を認識できます。
②モデル購買頻度×平均単価で導く
高頻度消耗品では基本数値が見えてきます。
③マーケットサイズから算出する
すべての取扱商品を、対象顧客率で割ることによって算出します。
この値は、対象顧客がすべて自社で買った場合の上限値となります。
以上から、現在の上得意の総数、自社の上得意の理想像、目標数字が把握できます。
後は、それを増やすことを考えていくのです。
RFM分析の「R」最終来店の管理法
RFMはそれぞれ異なる指数
RFM分析と言うと、多くの企業が最終来店、来店頻度、購入金額の情報を積算して場得意客を調べています。
この方法を使えば、現在、自社にとってどのお客様の貢献度が高いかを認識することはできます。
しかし、それ以上のことがわからないので、次の施策につなげることはできません。
つまり、「最終来店」と「来店頻度」と「購入金額」は、それぞれ異なる指数として扱う必要があるということです。
そこでここからは、各指数について詳しく見ていきましょう。
まずは「R」、つまり「最終来店」の管理についてです。
最終来店を管理し顧客流出を食い止める
商品・サービスには、それぞれ固有の購買頻度というものがあります。
そして店舗には、それぞれの取扱商品に応じて、モデルとなる来店頻度があります。
たとえば食品スーパーなら、2日に1回~週1回程度でしょう。上得意が来店する目安の頻度が重要になります。
特に、来店頻度が高く消耗品ベースの店舗は、来店頻度の高い顧客が上得意を占めることになります。
そのため、まずは顧客のリピートが遜色なく達成されているかが大きな課題となります。
高頻度に来店する店で、得意先がひと月来店しなければ大きな問題といえるでしょう。
たとえばメガネ店は、最終来店日への対応が取りやすい業種といえます。
メガネの買い替えは平均で2年半から3年程度です。
これは、長期間ひとつのメガネを使用する顧客層も含めているので、早い人は1年で買い換えることになります。
つまり、3年以上買い替えに現われないお客様がいると、他店での購入を疑うことになります。
そのため、何とか3年のうちに再来を呼びかけなくてはなりません。
最終来店日対策としては、商品を購入してもらわなくてもよいので、まず来店してもらうことが重要です。
来店してもらえたら、提供したメガネに満足しているかなどを確認します。
自店の顧客の流出は、破格の値引きを行なってでも食い止める必要があります。
このような施策は、最終来店日管理で可能になります。
「最終来店」管理の二つのポイント
最終来店日の管理ポイントは、以下の二点です。
・来店日超過の顧客への引き戻し対策(休眠客対応)
・来店日超過の顧客名簿の整理
最終来店日の管理は、買い替え購買が発生する消耗品や耐久財に有効です。
高頻度品でないかぎり、この管理により購入頻度や購買額の増加は期待できません。
しかし、最終的にはリピートの増大につながる管理方法といえます。
RFM分析の「F」来店頻度の管理法
次は、RFM分析で使われる指数の二つ目、「来店頻度」の管理について説明していきましょう。
店舗にとってまず重要なことは、「あの店に行ってみよう」と思ってもらうことです。
「3回安定、10回固定の法則」というものがありますが、お客様に複数回来店してもらうことが、顧客管理において重要なポイントになります。
来店頻度を管理し購入のための来店を増やす
顧客によって購買行動は異なりますが、来店頻度はとくに顧客によって様々です。
1日に何度も来店する顧客もいれば、たまにしか来店しないけど必ず購入する顧客もいるのです。
このように来店頻度は、それぞれの顧客の独自の指標であり比較することは困難です。
しかし、比較することはそれほど重要ではありません。
ここで重要となるのは、それぞれの顧客が持つ頻度を損なわず、「購入のための来店」を増やすことなのです。
お店がオープンする場合、オープン初日から順調に売れることはほとんどありません。
オープンからしばらく経ってから、顧客はおもむろに商品を購入しはじめます。
この原因は、商品やスタッフが自分になじむまでは、不安の残る購入はしないものだからです。
このような顧客の心理や行動は、顧客の頻度対策に使うことができます。
新規のお客様には、お客様がなじむ3回程度まで早めに来店してもらうよう対策するのです。
お客様には、定期的に顔を出した店にはその頻度を守る傾向があるので、その頻度をこちらでつくって上げるのです。
来店頻度管理 3つのポイント
・顧客に合わせた来店頻度の実現
・顧客に合わせた購入頻度の実現
・より高頻度にするための早期の関係構築
複数回来店しても、商品購入に及ばないお客様も存在します。
この対策にも、顧客との経験づくりが大切になります。
3回に一度や3ヶ月に一度のような線を引いて、お客様にとって安定した購入ペースをつくり、購入頻度を適正に引き上げる必要があります。
RFM分析の「M」購買金額の管理法
RFM分析のうち、もっとも誤解されやすいのが「購入金額」の分析です。
RFM分析を年間当たりで分析する際、金額がもっともわかりやすい指標となりがちです。
しかし、金額だけにフォーカスすると、特殊な需要で高額品を購入した顧客にスポットが当たりがちになってしまいます。
顧客管理は、基本的には将来の収益アップのために行なうものです。
そのため、一度高額の商品を買ってもらったこと自体には、それほど意味がありません。
「購入金額」分析の使い方
「固定客化」において最も重要なことは、店と顧客との関係性です。
過去に高額品を買っていたとしても、現在その顧客が来店していないことには意味がありません。
また、店には目標とする固定客のラインがあります。
数人の顧客がラインをはるかに上回る購入をしたとしても、それをもとに店の方向性を変えることにはならないのです。
購入金額でお客様の将来購入を推測することは困難です。
そこで、高額購入者には高頻度来店者になってもらう方法を考えていくべきなのです。
そもそも高額購入者は、高頻度購入者になってもらえる可能性が高いといえます。
高額品を購入する場合、価格や品揃え以上に、専門的な接客や店舗に対する信頼が必要です。
その条件をクリアし、高額品を購入してもらっているお客様は、自店に対する良好なイメージを持っているといえるのです。
このようなお客様にこそ、日常的に来店していただき固定客になっていただきたいのです。
一般的には、RFM分析を行い、低頻度来店者を積極的に誘導する施策が行なわれます。
しかし、すべてのお客様に案内を送ると経費がかさんでしまいます。
そこで、購買金額の指標をもって、積極的に再来を見込む客層を見出すのがよい使い方なのです。
一方、頻度の高い顧客の中にも、購入額の伸びない客層が存在します。これは、自店とのつながりが一部にとど
まっていることが疑われるでしょう。
お客様とのつながりを構築するCRM
店とお客様との関係は、商品を販売すれば終わりというものではありません。
お客様に何度も来店してもらうため、良好な関係作りは不可欠です。
お客様と良好な関係をつくり上げるための施策を「CRM」(Customer Relationship Management)と呼びます。
そして、「顧客満足」について考えれば、顧客との関係構築で重要なのは、商品購買後のアフターフォローにあると言うことができるでしょう。
アフターフォローの二つの行程
アフターフォローについては、その性格によって次の二つの行程に分かれます。
①アフターケア(購買後アフター)
商品にもよりますが、商品を販売した段階でお客様が納得しているケースは少ないといえます。
そのため店側は、商品を販売した後お客様が期待した恩恵を十分に享受できるように努める必要があります。
そのために、使用説明やメンテナンスの手法、有効な活用方法の提案などを行わなくてはなりません。
商品購入後のクレームは、このアフターフォローヘの不満によるものがほとんどです。
「売りっぱなし」で、顧客への関心が放っておかれると、お客様の不満が爆発するのです。
顧客満足を高めるためには、お客様へのフォローが従来以上に重要になってきています。
また、クレームに関しても、積極的に対応しようとする企業が増えてきています。
しかし、お客様との関係をより深くするという点で考えると、その対応はイレギュラーなお客様を出さないための内容に留まっていることがほとんどです。
お客様が、購入した商品に興味を向けている期間はそう長くありません。
お客様の記憶に残る商品提供を行わなければ、自社で買ったことすら忘れられてしまうのです。
そのため、商品を購入した日から数日が、お客様との関係を深める最大のチャンスとなります。
②フォロー(活用メンテナンス)
一定以上の耐久期間のある商品の場合、その期間中のメンテナンスが必要になります。
商品の保証期間などもありますが、次回購入を期待して顧客管理をする場合、商品への満足は絶対に必要な条件です。
アフターケアと異なり、使用期間での不満は表に出にくい傾向があります。
店側の気づかないところでお客様は失望し、静かに離れてしまうのが特徴です。
たとえば、カメラを買いに来た場合を考えてみましょう。
お店の仕事は、商品を引き渡して終わりではありません。
何の説明もなしに商品を渡すだけだと、半数以上の人はカメラの奥深い世界を知らずに終わってしまいます。
そのため、お客様が商品を購入する際、何のためにどのような環境でカメラを使われるのか、問いかける必要があるのです。
お客様の目的が達成されるよう、付帯するフイルムやレンズ、試写などを含めてお客様に提供するべきなのです。
次に、お客様がカメラを楽しむことができるよう、撮影の機会があるかを問いかけます。
購入後に撮影の機会がある程度の頻度でないと、カメラは押入れの奥へとしまわれてしまいます。
これを避けるためには、撮影会を提案することもできるでしょう。
ほとんどの場合、このようなフォローに踏み込めていません。
しかし、ここに利益が眠っていると考え、手厚いフォローを心がけることが重要です。
10人のうち1人でもレスポンスを返していただけるお客様がいるなら、その方は優良な固定客となってくれることでしょう。
使えない理由を取り除くアフターフォローの方法
ここでは、アフターフォローについてもう少しく詳しく見ていきましょう。
あなたも「買って損した」と思った商品がいくつもあることでしょう。
あらゆる業界から毎年、膨大な量の新商品が発売されるため、衝動買いを含めると、相当量の失敗を経験していることと思います。
小売店は、すでにこの経験の危険性を十分に認識しています。
購入後にお客様を本当に満足させることが、再購入の生命線であることにも分かっています。
そのため、サービスカウンターで不満を伺ったり、返品保証を設けたりしているのです。
お店の知らないところで信頼がダウン?
接客で重要なポイントは、買えない理由を取り払うことといってもいいでしょう。
そして、アフターフォローの管理はこれを一歩進めた「使用できない理由を取り払うこと」になります。
たとえば、奥様がワンピースを買った場面を見てみましょう。
お店ではノリノリで買って帰ったにもかかわらず、家に帰ると旦那様が渋い顔をして寸評します。
「いったいどこで着るの?」といった感じです。
この時、言われた奥様は「ほんとうに、どこで着るんだろう?」と疑問を持ちます。
こうなると、奥様は事実を曲げて「私が好んで買ったんじゃない。編されたんだ」と認識するようになるのです。
店頭で試着したときは喜んで身に着けていたワンピースも、旦那様のひと言で印象が塗り替えられてしまいます。
これは大きな問題です。
店の知らない間に商品の評価が変わり、店への信頼がなくなってしまうことになるのです。
信頼ダウンを防ぐアフターフォロー
商品を購入してから活用するまでの間、お客様の満足度は保留状態にあります。
この商品に興味を寄せている早期の段階で、商品の魅力を十分に引き出しておくことが重要です。
先ほどの例で言えば、「旦那様と出かけるときに着るとよさそうですね」と、使用する場面を創造してもらう、コーディネートのアドバイスを行う、不評なら交換できることを伝えるなどの、アフターフォローが考えられます。
お客様から感謝されるのも、アフターフォローの期間です。
つまり、アフターフォロー中は、お客様との距離を詰めるのに最適な状況となるのです。
アフターフォローでは、以下のポイントが重要となります。
・お客様の満足を引き出すための対応
・お客様の満足を確認する行動
・お客様との距離を詰めるコミュニケーション
より強力な関係性を構築するためのフォロー術
顧客フォローで再来店を誘導する方法
「より早く」「より多く」が固定客化の目的とするなら、必要なときに必要なものだけを購入されるお客様は、固定客化された状態とはいえません。
お客様に満足してもらうことに成功したら、「また買いたい」という要望に速やかに対応しなくては、せっかくの評価を無駄にしてしまいます。
そのため、個々のお客様に対して再来を誘導できるような「顧客フォロー」が必要となります。
たとえば、行きつけの美容室のことを思い出してみてください。
あなたが、最初にその店を選んだきっかけは何だったでしょうか?
割引が大きかった、お店がおしゃれ、家に近いなどなど、様々な理由があると思いますが、お客様はその時々の具体的な判断基準のもとお店を選択していることに気がつくと思います。
当然店のほうでは、はじめてのお客様を気遣いながら接客します。
そして、お客様とスタッフのフィーリングが合い楽しいひとときを提供できたなら、後日、会話の内容を掘り下げるような手紙が送られてくるでしょう。
逆に、当日お客様との会話が弾まなかったなら、お誘いのはがきに書くことがありません。
そんなときは、たい「割引セール」などのハガキを出すしか手がないのです。
このことからも、お客様とのつながりを強化することと値引きは関係がないことがわかります。
値引きよりも、お客様に喜んでいただけるスキルがあることを伝え、お客様に理解していただくことが重要なのです。
つまり、利益の源泉である固定客に、ただ値引きだけを仕掛けていては本末転倒となってしまうといことです。
お客様とより多くつながることをめざす
お客様とのつながりを考えると、いくつかのつながるポイントを見つけることができます。
顔も名前も何もわからない、ただ名簿だけで存在するようなお客様の場合、価格やプレゼント品ぐらいでしかつながりを見いだすことはできません。
しかし、高頻度で店に顔を出していただけるお客様の場合、自社の商品や品揃え、企画イベントなどに興味があると考えることができるでしょう。
また、店頭でスタッフと親しく会話をしているお客様は、商品だけでなくスタッフやサービスも気に入っていると考えることができます。
このように、お客様とより多くの接点でつながることを実現させていくことが、フォローの目的なのです。
ライフサイクル別顧客管理術
店によって顧客管理は異なる
店によって、必要な顧客管理の手法は大きく異なります。
そこで、どの店にどんな管理が必要か、ライフサイクルをもとに見ていきましょう。
マーケットの変化によって、事業の活性化方法は変わります。
つまり、ライフサイクルにより、顧客管理の方法も変わってくるのです。
もちろん、ライフサイクルだけで顧客管理の手法は決定できません。
しかし、それぞれの管理手法の要点を理解することはできるでしょう。
各時期には次のような特徴があります。
マーケットの成長期には、顧客管理の必要性は少ないといえます。
市場に事業者が少なく、売り手市場であるため、顧客管理よりも一般ユーザーへの告知のほうがより重要だからです。
成熟期から展開期にかけては、マーケットの成長がひと段落ついてオーバーストア状態になる頃です。
この時期に重要となるのは、より効率的に顧客に販売することになります。
つまり、「より買ってくれそぅなお客様に告知すること」が重要となる時期です。
展開期から安定期では、競合が多くなります。
そのため、店舗は個々のお客様にとって有用で、近しい存在であることをアピールしなくてはなりません。
あらゆる形でお客様の要望に応える貢献度の高い店として、お客様の店選びの中心にいることを目指します。
このとき、CRMなどの顧客との関係性の強化が重要となるのです。
安定第3期以降では、競合が多く従来マーケットが縮小していきます。
そんな中、店舗はより細分化されたマーケットで独自性をアピールする必要が生まれます。
このとき店舗は、お客様と独自の関係で結ばれる必要があります。
他にはない商品、マネのできないサービスなどで、お客様とのつながりを作っていかなければなりません。
成熟期から展開期の顧客管理法
ここからは、ライフスタイルによる顧客管理手法の違いについて、さらに詳しくみていきましょう。
チェックすべき販促費
効率的な顧客管理を行なう上で、わかりやすい管理指標は販促費です。
何かしら販促活動を行っているのなら、概算で1人当たりの新規顧客に対してかけている販促費を出すことができます。
業態によって1人当たりの収益は異なりますが、1人当たり販促費より1人当たり顧客管理費が低い間は、管理の効果があったと考えることができます。
このことから、年間でコンスタントに購入していただける顧客に対しては、手厚いフォローをしても十分に見合うことがわかると思います。
このような効率的な顧客を抜き出し、店が想定している理想の購入形態へと誘導するためにRFMが重要なのです。
販促費を誰にかけるか?
新規顧客を獲得するために、年間1人当たり1万円かけている店舗について考えてみましょう。
店の販促費が売上対比4%とするなら、年間25万円以上買ってくれているお客様に、個別に1万円の案内を出したほうが、より効果が高いことは間違いないでしょう。
もちろん、マス販促と個別販促をそれぞれ分類して案内はできません。
この場合、マス販促を減らして上得意の販促を強化することで、より効率的な業績アップを狙うことになります。
具体的には、直近1年内に来店しているお客様で、25万円以上購入しているお客様に、DMなどの案内を送るという形になります。
顧客管理に有効なツールとは?
店舗の顧客管理方法としては、ポイントカードによる管理が有効です。
店舗としては、一見のお客様より名簿化されたお客様のほうが管理しやすく、よりリピートが見込めます。
そのために、ポイント割引などで顧客を区別していくのです。
このとき問題になるのが割引率です。
これはカードを発行する目的により変わってきます。
カードを発行の目的が、顧客名簿の管理を容易にし、必要なときに案内を出すためのものなら、割引は多くても2%程度になるでしょう。
発行の目的が、得意客に金銭的還元を行なうものなら、販促費以下で考える必要があります。
これは、おおむね5%以下です。
もしそれ以上の割引を実施するなら、顧客の囲い込み経費として計画しなくてはなりません。
展開期から安定期の顧客管理法
お客様への貢献度が重要に
ライフサイクルが進むと、お客様には商品購入方法の選択肢が増えます。
つまり、競合が増えるということです。
さらに現在では、同一業態だけが競合ではありません。
ネット通販などの異業態も、競合として意識しなくてはなりません。
お客様は、どこで買うと一番メリットが大きいか考え、店や他の業態を選択するようになります。
お客様の中で、最も貢献度が高い状態をめざす必要があるのです。
顧客が求めているのは特別
より親しくなることで、お客様の個々の要望に対応できるようにすることが重要です。
そのために、より多くのお客様の情報を蓄え、お客様により喜んでもらう必要があります。
CRMを考えると、値引きの設定はあまり関係がありません。
もちろん、ポイントカード会員などで一定の値引き設定はありますが、それ以上の値引きはひつようありません。
なぜならお客様は、「特別対応」を求めているからです。特にお得意様は、安さ自体を求めているわけではありません。
CRMで貢献度を伸ばす方法
CRMでは、お客様の購入動機となる個別のポイントに、スタッフがそれぞれ対応することが必要です。
そのため、具体的に対応できる顧客数には限界が出てきます。
このことからCRMでは、スタッフが管理するお得意様の実績が分析の対象となります。
そのお得意様のすべてが期待する購買行動が取れるように、お客様に貢献することが重要です。
貢献度を伸ばす手法は「聞くこと」が最も重要です。売ることに必死で、お客様の話が耳に入らないようではCRMを実現することはできません。
話を聞きはじめるときほど、お客様は「満足させるポイント」を話してくれます。
もちろん100%対応できるとは限りませんが、それに対応しようとする姿勢にお客様の喜びは生まれるものです。
安定第3期以降の顧客管理法
決め手は顧客の属性
コレクト性のある商品や、購買経験によって購入の判断基準が変化する商材の場合、ライフサイクルの安定期後半に属性による分化が起こります。
食品における自然食品や、アパレルにおける商品テイストの分化、カー用品のプロショップなどが客層による分化にあたります。
このようなショップはお客様を選びます。自店が選んだ客層とマッチするお客様でないと、つながりが長続きしないのです。
このとき、店の顧客管理の手法は大きく変化します。
安定第3期以降の管理手法は、お客様の「教育」がポイントとなります。
店は自社のポリシーを語り、スタイルを見せ、店が価値を置く世界観を顧客に問いかける必要があります。
「うちはこのような店です、あなたは共感しますか?」といった感じです。
お店に愛着を持ってもらう方法
店舗のスタイルに共鳴したお客様は、他店に浮気をしなくなります。
これを実現するには、顧客管理でどこまで店のスタイルを伝えることができたかがポイントとなります。
形態としてはライフサイクルの導入期に近い環境となります。
お客様にまず知ってもらうことが課題となるので、商品以上に立派なカタログや試供品など、費用対効果に合わないような案内も必要になることがあります。
店側はコアな客層を探すことになるので、自らが推す世界観の中では、お客様は浮気をしないと自信を持って対応することができます。
コンセプト系ショップの顧客管理法
たとえば、ラグジュアリーブランドの専門店はショップスタイルに極度のこだわりを見せています。
ブランドロゴから商品パッケージ、店員の化粧の仕方まで、店のイメージを損なわないよう気を使っています。
これは、顧客の憧れであり続けるために実施されます。
お客様を固定客化するには、お客様に近づいて話を聞くだけでは実現しません。
お客様の心に「こんな店で買いたい」という憧れを持ってもらわないと、お客様へのラブコールも響かないのです。
一流と呼ばれるラグジュアリーブランドは、固定客化に余念がありません。
お得意様だけのために、一夜限りのパーティー会場をつくり、オリジナル限定商品を提供するなど、圧倒的な特別扱いを実施しているのです。
他店を押し退けてコンセプトで勝負するなら、顧客の心を囲い込む必要があります。
そのために憧れと特別感を演出し、自店の世界に誘うことが重要となるのです。
顧客管理を徹底するフロー表の作成法
顧客情報を管理するために必要な3つの要素
顧客情報の管理を徹底するには、3つの要素が必要です。
第一は、お客様の管理カードです。ここに、お客様の何を管理するかが明記しておく必要があります。
第二に分類表です。
店舗によって顧客管理がめざす方向は異なります。
RFMでお客様の価値を分類するのか、CRMでお客様と関係性を構築するのか、ライフサイクル別で自店のコア客層を捕まるのかはっきりさせます。
そして、自店の客層をどこに誘導したいのか明記した表を作成するのです。
第三に、実際的な運用のもととなるフロー表です。
フロー表は、お客様の情報を入手した後、どのように活用して管理するか定める表です。
顧客管理は、フロー表によって運営する必要があります。
顧客情報を運用するためのコツ
まず、具体的に情報を活用し、成果を見込む流れを作らなくてはなりません。
基本的には、理想の運用方法を主軸とします。
しかし、お客様へのアプローチに対して、一度で反応があることのほうが少ないです。
そのため、できるだけ多くのお客様に反応してもらえる、数段階のフォローを作る必要があります。
次に重要なことは、反応があったお客様の囲い込みです。反応のあったお客様に対し、より上位のアプローチが行なえる流れを作ります。
また、反応はすべて前向きなものとは限りません。クレームなどもお客様の期待の裏返しと考え、対応する流れを考えておきましょう。
そして最後は消却です。
お客様の情報が詰まった名簿を破棄するのはもったいないような気がします。
しかし、どこかで一度活用する名簿を整理しなくてはいけません。
システムであれ人手であれ、活用できる情報には限界があるのです。
顧客管理会議を上手に実践する方法
顧客管理会議の導入
顧客管理は、どうしても経営陣だけで考えてしまう傾向にあります。
また、現場も無機質に運用してしまうことが多いといえるでしょう。
しかし、お客様と接するのは現場の人です。
そのため、顧客管理は、お客様との接点を持った現場で話し合う必要があります。
たとえば、朝礼で挨拶の練習をしている会社は多いです。
これも素晴らしいことですが、もっとリアルに応対するお客様一人ひとりについて現場で話し合う機会があればより良いでしょう。
おすすめは、朝礼に昨日の来店顧客への対策を入れることです。
スタッフの記憶に残っているうちに、お客様一人ひとりにどう対応するかを決めていくのです。
そのような時間が持てない場合は、企画会議のときに運営するといいでしょう。
次回のイベント企画の内容がすでに決まっていたとしても、現場スタッフと内容を確認してから顧客にアプローチしたほうが、よりよい反響が得られます。
アパレル業界から学ぶ顧客管理
アパレル業界の顧客管理は、お客様の好みや職場の環境など、多岐にわたる顧客情報が必要になります。
販売スタッフの力量が大きく影響する業界のため、顧客管理のトレーニングのモデルとして最適といえるでしょう。
アパレルの店舗では、店長が週に一度の間隔で、昼食時に1週間の顧客管理の確認を行っています。
この1週間で対応したお客様の顧客カードをもとに、どんなお客様か?どんな話ができたか?何を喜んでくれたのか?何に興味があるのか?など話を進めていくのです。
すると、話は2点に収束していきます。
一つ目は、スタッフがお客様のファッションや趣味を理解し、お客様にプラスの情報を与えられるかということです。
そして二つ目は、どうすれば再来店していただけるか?ということ。
これを実現するために、お客様一人ひとりの商品コーディネートを用意し、個別にDMを作るところもあります。
分析に沿ったアプローチ
顧客分析ができたら、その内容に沿ってお客様へアプローチしていきます。
その手法は、電話、FAX、ハガキ、メールなどなど、多種多様にあります。
それぞれ経費はかかるので、まずはお客様に合った媒体を選ぶことが肝心です。
しかし、媒体が異なっても内容が大きく変わることはありません。
一番大きなポイントは「お客様に何を訴えるか」なのです。
4つのアプローチ手法
お客様へのアプローチは4つのモデルに分けることができます。
①リレーション型
このモデルは、スタッフとのリレーション型になります。
商品よりもまず、私が主体の内容で構成していきます。
②マイレター型
リレーション型と同じく、スタッフが前面に出た内容です。こ
ちらは、もとから顧客との親しい仲があるのではないので、これからおつき合いを深めていきたい旨で構成していきます。
③サンキューレター型
アフターケアのためのお礼状です。
お客様の情報を加えて再来を促すことと、ケアのための保証をつけるようにします。
④イベント型
イベント型は顧客情報を十分に把握できていない、あるいはお客様との関係が薄いときに使う手法です。
メリット(割引やプレゼント)が誘店のポイントとなります。
顧客管理 まとめ
販促活動を行う上で、顧客管理はとても重要となります。
あなたの会社の目的に応じて最適な顧客管理を行えば、きっと売上もアップすることでしょう。
ぜひ参考にしてみてくださいね。