10店舗以上を経営するオーナーとなるためには、職人から卒業して経営者にならなくてはなりません。
例えば、「お客さまのためなら儲けは度外視」という考え方のオーナーは、職人気質が強いといえます。お客様から喜ばれるために味やサービスを磨くことは大切ですが、それだけでは多店舗経営は成り立たないのです。
また、ずっと現場に立ち続けたいと願うオーナーもいらっしゃいます。
しかし、ずっと現場に出ていると、自分のいない店舗のマネジメントができませんよね。
現場目線をなくしてはいけませんが、経営者としての目線も養わなければ多店舗展開はうまくいかないのです。
店舗展開の規模が大きくなるほど明確なゴールが必要な理由
経営は、「カネ」の土台をしっかり築くことが大切です。
「カネ」に重心を置かなければ、あなたのこだわりを実現することができませんし、問題が起こるとお店を続けることすらできません。
多店舗展開を考えているのなら、職人である自分を捨てなくてはいけません。
職人ではなく経営者として、店舗数を増やしていく計画を立て、店舗数が増えても会社を運営できる仕組みを作ることこそ重要な仕事になってくるのです。
店舗展開の規模が大きくなるほど、夢を明確に描くことの重要度が増していきます。
なぜなら、規模が大きくなるほどゴールは遠くなるので、あやふやでは進むべき道がはっきりしません。さらにゴール次第で、経営に取り組む姿勢にも違いが出るのです。
ゴールへの道のりは様々
経営者が明確に未来の姿を描いていることで、融資の条件や経営計画にも大きな違いが生まれます。
ゴールが明確になれば、到達までの具体的な事業計画や資金計画も決めることができます。
これが決まれば、銀行への印象を良くすることができ、有利な条件の融資を引き出せるかもしれません。
また、一言に多店舗展開と言ってもそのゴールは様々です。
どれくらいの規模にするか、いつまでに実現するか、どのような形にするか、何店舗出店するかなどはあなた次第なのです。
さらに、その内容によって直営店だけで展開するのか、フランチャイズにするのか、独立支援を行うのか、M&Aを行うのかなど、様々な選択肢が生まれます。
ゴールを明確にすることは、会社のあるべき姿や進むべき方向を定めるということです。
経営者にとっては、事業を拡大するための指針とすることができます。
また店舗数が増え、関わる人が増えたときに、全体の意思統一をするためにも必要になります。
さらに、明確なゴールに突き進む経営者の姿勢は、銀行などとのお付き合いでも問われてくるのです。
ゴールに確実に辿りつくための4つのロードマップ
ゴールを明確にすると、次はそこにたどりつくまでのロードマップが必要になります。
このロードマップは4つの段階に分けて考えなくてはなりません。
必要な4つのロードマップは次のようなものです。
・ゴールに向けたロードマップ
・中長期のロードマップ
・短期的なロードマップ
・新規出店の際のロードマップ
まずはゴールを明確にし、ゴールに向けたロードマップを作っていきます。
そして、ゴールが明確になれば、それに向けた中長期のロードマップが必要になります。
これは、直営にするのか、FCにするのか、独立支援なのか、M&Aなのかということです。
そして、中長期的なロードマップを着実に進んでいくには、もう少し短期的な計画を立てる必要があります。
これは、いくらの費用を計画に投じるかということです。
いわゆる予算というロードマップです。
さらに予算を決めるためには、出店計画が必要になります。
これがさらに短期的なロードマップである、新規出店の際のロードマップです。
自分で出店計画を作成している方もいますが、なかなか詳細な計画まで落とし込めている人はいないかもしれません。
しかし、詳細な道筋をきちんと考えておけばスムーズに出店できますし、想定外のトラブルも未然に防ぐこともできるでしょう。
3パターンの計画で安全な経営を実現
出店計画を立てるときには、予想通りに物事が進んだ通常パターンだけでなく、好調パターンと不調パターンも想定しておいた方が良いでしょう。
特に不調のパターンは、実際に厳しい状況におかれたときに役に立ちます。
人は急に対応できないので、何も想定していない状態で状況が厳しくなると対応が遅れてしまうのです。
そして、出店計画の作成には重要なポイントが二つあります。
一つ目は、初年度の毎月の計画だけでなく、投資回収までを想定した5年間の計画をつくること、二つ目は、損益計画だけでなく収支計画もつくることです。
その理由は、利益が出ていても収支がマイナスになれば会社は倒産するからです。
収支がマイナスになるということは、手元の現金がなくなるということです。
このような状況を防ぐためにも、収支計画が必要になります。
二つのポイントを押さえたうえで、「通常」「好調」「不調」の3パターンも計画を立てるのは正直面倒ですよね。
しかし、飲食店を経営するうえで、計画通りに物事が進むことはほとんどありません。
例えば、売上が予想を下回ることなどは普通に起こり得るのです。
このとき不調時の計画がなければ、対策もすることができず、資金繰りが苦しくなるだけです。
そして、銀行への返済が滞ったり、月々の返済金額を下げてもらったりすれば、その時点で銀行の格付けは確実に下がります。
そうなると、銀行の融資が受けられなくなり、ゴールを目指すことができなくなるのです。
これ防ぐためには、不調パターンでも収支計画に問題がないよう、融資の条件を事前に交渉しておかなければなりません。
交渉を有利に進めるには入念なシミュレーションをして、銀行にも計画を根拠資料として提出し説明する必要があります。
このように、できるだけ詳細なロードマップを作成して目標に向かって進まなくてはなりません。
もちろん、詳細なロードマップを作成するには時間も労力もノウハウも必要です。
しかしこれを作らず見切り発車すると、どこで問題にぶつかるかわかりません。
スムーズに夢を叶えるためにも、ぜひ取り組むようにしてください。
ロードマップにピッタリの資金調達法
次に、新規出店するときの資金調達で考えるべきことを具体的に考えてみましょう。
例えば、お店の出店に2000万円がかかる場合、以下のような資金調達の仕方が考えられます。
手元に2000万円の資金があるとしたら、あなたはどうしますか?
・手元資金の2000万円を使う
・銀行から2000万円借りる
・1000万円は銀行から借りて、1000万円はリースを組む
・2000万円のリースを組む
・業務委託やサブリースで出店する
この中で、手元資金を全て使うことはやめておいたほうが無難です。
経営がうまくいかず、手元の資金が不足した場合、銀行は運転資金を貸してくれません。
万が一を考え、手元のお金はできるだけ使わないでおくほうが安心です。
また、リース会社が出店費用2000万円全てリースしてくれることは少し現実的ではありません。
目標により資金調達の方法は異なる
コストの面で比較すれば、銀行融資の金利が一番安く、リース、業務委託の順で高くなります。
金利を考えると銀行で融資を受ければよさそうですが、銀行も無限に融資してくれるわけではありません。
銀行にもお店や会社の状況によって与信枠があります。
与信枠とは、あなたが銀行から借りられる限度額のことです。
例えば、あなたの会社の与信枠が4000万円とすると、あなたの目標にたどり着けるでしょうか。
あなたの目標が「今期はあと2店舗出店すればいい」というものなら、1店舗2000万円なので銀行の与信枠内でまかなえます。
しかし、3店舗出店することが目標なら、銀行の与信枠だけではまかなうことはできません。
この場合は、リースとの組み合わせを考える必要もでてくるでしょう。
さらにもっと多くのお店を出したいと思うなら、リースの限度額も超えてしまい、業務委託やサブリースを組み合わせなければ目標達成できないことになります。
これが、ゴールにより資金調達の方法が変わるということです。
多店舗展開を考えるなら、資金調達の方法も考えながら出店のペース配分を考えなければなりません。
審査の流れを理解しておけば銀行融資は下りる
多店舗展開していくには、出店のための資金が必要です。
そして、店舗の数が多いほど大きな金額の資金を用意しなくてはなりません。
ほとんどの場合、銀行の融資を受け資金を準備すると思いますが、金額が大きくなると新たな壁があなたの前に立ちはだかります。
融資審査の明暗を分けるものは何か?
その壁とは、銀行の融資のしくみです。
銀行から融資を受ける場合、ある程度の金額までは支店長の権限で融資が決まりますが、支店長権限の枠を超えると最終判断は銀行本部が行うことになります。
支店長が決済できる金額は銀行や支店によりまちまちですが、複数店舗を同時に出店する費用のように高額になると本部決済に回る可能性が高いでしょう。
本部の審査では、提出書類の内容がより重要になります。
なぜなら、本部の人はあなたのことを知らないからです。
いつも利用している銀行の支店長なら、多店舗展開を考えるまでにコミュニケーションを取っているので、ある程度あなたの人柄なども考慮して融資してくれるでしょう。
ところが、決裁が本部に回った場合、あなたが本部に足を運んで本部の担当者に会うことはほとんどありません。
本部決済に回ってしまうと、担当者と信頼関係を築くことが難しくなるのです。
そのため、今までより大きな金額の融資を申し込む時は、より気合を入れて提出書類を整えなくてはなりません。
融資を審査する人にとっては、目の前の稟議書の情報が全てとなるのです。
本部決済に回ると、あなたの人となりは関係なく、より厳しい目で書類のみが判断されます。
銀行に心のこもった「ラブレター」を送ろう
決済が本部に回ると、相手に会って説明ができない分、書類の内容でいかにアピールできるかがカギとなります。
これは、ラブレターに例えるととてもわかりやすいと思います。
例えばラブレターの場合、あなたの気持ちをきちんと伝えなければ相手はあなたの気持ちに気付きません。
さらに、しっかり自己アピールをしなければ相手の気持ちも動かないでしょう。
あなたは相手の気持ちを引くために、全身全霊を捧げてラブレターを書かなければならないのです。
これは、銀行に提出する書類も同様です。
気持ちや自己アピールが不足していると、銀行は融資したいと思ってくれません。
あなたは、全身全霊を捧げて銀行にラブレターを送らなければならないのです。
あなたの会社の魅力を最大限アピールするためのラブレターは、銀行の稟議書に添付する次の6つの資料です。
・5カ年事業計画書(最低限1カ年の予算書)
・事業説明書(出店計画書)
・決算害・申告書
・最新の試算表
・銀行取引一覧表
・資金繰り表
銀行本部はこれらの資料から、過去の実績や現在の会社の状況、経営者の価値観などを読み取りながら融資の審査を行います。
このプロセスを理解していれば、提出する書類の内容がどれだけ重要かわかると思います。
さらに出店計画書については、「通常時」「好調時」「不調時」の3パターン用意して提出するとよいでしょう。
これにより、きちんと未来予測もできていることをアピールできます。
書類を提出すると、言葉で補足することはできません。
書類を通して、オーナーとしての姿勢をアピールできるような書き方をするのがベストなのです。
予算書を戦略的に活用し融資を引き出す方法
PL予算の活用法
たとえ融資申請をしなくても、経営者として数字を読むために最低限1カ年の予算書は作成するようにしましょう。
PLベースの予算書はとても役に立ちます。
売上予算だけではなく、売上、原価、人件費、その他経費、そして利益をすべて含むPL予算を計画していきます。
ただし、ただ予算を書き出すだけでは意味がありません。
売上や経費の実績を予算の横に書き加えながら、予算と実績を比較して見ていくことが重要です。
比較してみた結果、実績が悪いとその原因を検証する人は多いのですが、予算よりも実績が良かった原因を検証する人は少ないようです。
しかし、良くても悪くても、自分の立てた予想が外れたという点で見れば同じことです。
その原因を突き止めないと、予算書の精度はいつまでたっても上がりません。
特に、将来上場を考えている場合は、予算の精度も求められます。
そのため、なぜ良かったのか、なぜ悪かったのかを分析しながら、地道に予測の精度に磨きをかけていく必要があります。
上場を考えていなくても、予算精度を高めると将来の出店戦略も立てやすくなります。
あなたの夢を叶えるための土台を作るため、大きな力をなることでしょう。
BS、CS予算の活用法
また、PLの予算だけでなく、BSとCSの予算も作成しておいた方がよいでしょう。
BSやCSの予算を作成する経営者はあまりいませんが、BSは銀行の格付けの評価にも大きく関わり、キャッシュ・フローが回らなくなれば会社は倒産します。
そのため、この2つについても予算も合わせてチェックした方がよいのです。
予算書を作り実績と比較検討することで、その先の対策を早めに考えることができます。
例えば、年度開始からの半年を分析すれば、年度末の会社の状況を予測しやすくなります。
予測よりも多くの利益が出ているときには、節税対策を早めに行うことができますし、利益が少なければ集客策やコストを見直し、先手を打って立て直すことができるでしょう。
会社をあなたが設定したゴールにたどり着かせるためには、事業計画書や予算書で進む道を確認し、必要に応じて軌道修正しながら進むことが重要です。
今自分がいる現在地を見直すことで、より効率的で安全な道を選択できるようになるのです。
銀行に好かれる付き合い方のコツ
希望の融資を受けることができれば、それで銀行とのお付き合いは終わりでしょうか?そんなことはありませんよね。
むしろ融資を受けてからが、銀行とのお付き合いのスタートです。
あなたが事業を続ける限り、銀行とのお付き合いは途切れることがありません。
そこで、銀行とのお付き合いの仕方について説明していこうかと思います。
覚えておくべき銀行との付き合い方の基本
まずは、銀行との付き合い方の基本について考えてみましよう。
経営をドライブに例えると、お金は車を走らせるためのガソリンです。
そうすると銀行は、ガソリンスタンドのような存在と考えることができます。
遠くにドライブするなら、途中にガソリンスタンドはできるだけたくさんあったほうが安心ですよね。
これと同じで、遠い目標に向かって飲食店を経営していくときは、お付き合いする銀行は多いほうが安心できます。
また、実際のガソリンスタンドならお金を払えば給油してくれますが、銀行はそうは行きません。
ふらっと入っていきなりお金を貸してくれと言っても、貸してはくれないのです。
そのため、いざというときに有利な条件で資金を提供してくれる銀行を確保するには、普段からのお付き合いも重要になります。
普段のお付き合いが融資の明暗を分ける
融資の審査では、業界特性や経営者の能力などの目に見えない要素も加味されることがあります。
そのため、銀行から必要なときに融資を受けられるようにしたり、できるだけ有利な融資条件を引き出したりするために、定期的に銀行の担当者に会社の状況を説明し信頼関係を築かなくてはなりません。
銀行に説明ができるということは、会社の状況を数字で把握していて、決算書の数字もちゃんと読めていると判断されます。
「この会社なら大丈夫だ」「この経営者になら貸したい」と思ってもらうためには、あなたが経営に積極的に取り組まなくてはならないのです。
例えば、数カ月に一度銀行の担当者に毎月の業績結果である試算表を渡し、現状報告や今後の予定などを説明すると信頼度はアップするでしょう。
また、年に一度の決算時には銀行に決算書を持参し、支店長に直接説明する方法も信頼度をかなり向上させることができます。
忙しい支店長と会うのは少しハードルが高いかもしれませんが、それでも時間を割いてもらえるなら信頼関係が構築できている証拠とも言えるでしょう。
そのような存在になることを目指してください。
銀行と信頼関係が構築できれば、一時的に会社が赤字になったとしても融資を受けることができるかもしれません。もしものために、銀行とはよいお付き合いをしていきましょう。
あなたの印象をアップする書類の届け方
会社が倒産しない限り、銀行と会社の関係は続きます。ところが、何もしないと良い関係性を続けることができません。途中で振られてしまわないよう、継続した関係づくりをしなくてはならないのです。
定期的に決算書などを用意し、銀行の窓口に足を運び、決算書の内容や財務状況、今後の展望などを報告し、親しいお付き合いを続ける努力が必要です。
具体的に言うと、まず年に一度の決算はきちんと報告しておくようにしましょう。
決算が終われば、銀行の担当者はその結果を稟議書という形で上司に報告します。
場合によっては、その稟議書は本部にも回っていきます。
この業務がスムーズに行えるよう、決算報告書などをきちんと届けるようにしましょう。
決算書は郵送するだけではなく、銀行まで足を運んで説明した方がよいでしょう。
直接会うことで、書類だけでは伝えることのできない細かな部分まで担当者に伝えることができます。
さらに、伝えておきたいことを決算分析報告書として書面にしておくとよいでしょう。
例えば、「一時的に利益は落ちたけれど、理由を突き止め解決している」という状況だとします。
この説明を口頭で伝えると、説明を聞いた担当者は内容を理解してくれますが、そのことを上司にうまく報告してくれるかどうかはわかりません。
また伝えてもらえたとしても、担当者が正確に内容を把握していないおそれもあります。
確実にこちらの意図を伝えるには、稟議書にそのまま添付して使える決算分析報告書を持参するほうが確実です。
さらにこの決算分析報告書で、来年度の方針や予測について具体的な資料と数字で説明できれば完璧です。
担当者の手間も減らすことができるので、喜ばれると思いますよ。
複数の銀行と付き合うメリットとは?
最大のメリットはリスクヘッジ
さらに、1つの銀行だけとお付き合いするのではなく、どんどん増やしていくほうがよいでしょう。
お付き合いする銀行の数が増えれば、必要な資金を分散して調達することができるようになります。
極端な話、1行で5000万円を借りるよりは、500万円を10行で借りるほうが借りやすい場合もあります。
また、お付き合いしている銀行が複数あれば、一つの銀行に融資を断られても他の銀行に申し込むことができます。
融資条件を比較することも可能ですので、選択肢が広がりリスクヘッジできるのです。
さらに、銀行同士は横並びの意識が強く、どこかの銀行がよい条件を提示すれば他行もそれに合わせる場合もあります。
どこかで良い条件が引き出せれば、「A銀行さんの条件はこうですが、B銀行さんはいかがですか?」という交渉もできるのです。
逆に、メイン銀行が貸し渋ると、他の銀行も貸し渋るようになる場合もあるので注意してください。
あなたの目標に合わせたお付き合いを
他にも、複数の銀行とお付き合いするメリットはたくさんあります。
そのため、チェーン展開している飲食店ともなれば、20以上の銀行とお付き合いしていることも珍しくありません。
最初からたくさんの銀行と付き合う必要はありませんが、多店舗展開を考えるなら、お付き合いする銀行の数を徐々に増やすことも考えておかなければならないでしょう。
また、あなたの会社のゴールによって、メイン銀行の選び方は変わります。
「5年かけてじっくり店舗を増やしたい」「3店舗同時にオープンさせて、一気に拡大していきたい」などなど、経営者によりゴールと計画は様々です。
そのゴールを叶えるために、親身になって力を貸してくれる銀行はどこなのか、規模が大きくなってもメインとして支援してくれる銀行はどこなのか、目先の融資にとらわれずじっくり選ぶことが大切です。
また、銀行によって融資の姿勢は違うので、銀行それぞれの特徴を知った上でメインとする銀行を選ぶことも大切です。
銀行とのお付き合いは長期になりますが、信頼関係一は朝一夕には築けません。
少しずつ準備するようにしてください。
決算はあなたの都合のよい時期でよい
経営者になると毎日が大忙しです。
特に決算の時期になると、やることは山積みで睡眠時間を削る必要も出てくるかもしれません。
ここでポイントになるのが決算の時期です。
お店の忙しい時期と決算の時期が重なると、思うような決算書を作ることができないかもしれません。
あなたの時間をいつ、何に振り分けるのかにもマネジメントの力が求められるのです
決算時期を変更するとあなたは楽になる
あなたは「決算は12月」と思い込んでいないでしょうか。
実は決済時期は必ずしも12月でなくてよく、変更もそれほど難しいことではないのです。
特に飲食店では、12月は忘年会が多い時期なのでいつもより忙しいです。
わざわざこの忙しい時期に、決算期を重ねる必要はないのです。
忙しい時期に決算を行ってしまうと、決算書の内容や見せ方を十分検討できません。
すると、新しい店舗を作ろうと考えたとき、融資の条件に影響してしまいます。
また、予想外の税金を支払う必要が生まれてしまう場合もあるのです。
決算時期を変更すると節税もできる
忙しい時期と決算を重ねてしまうと、税金が高くなる危険があります。
12月は飲食店にとっては稼ぎ時で、予想以上に利益が出ることもあります。
12月決算ではこの利益に対し節税対策がとれず、目標としていた利益よりも多額の利益が出た状態で決算を迎えることになりかねません。
節税対策をする時間的余裕がなく、予想外の税金を支払わなくてはならなくなってしまうのです。
これが例えば決算が6月なら、12月、3月、4月といった飲食店の繁忙期で余分に出た利益を、5~6月の2カ月にわたって調整することができます。
節税対策をする余裕があるので、税金も予定通りの金額で済ませられるのです。
お店の状況を考えて決算時期を変えれば、決算準備にも落ち着いて取り組むことができます。
そうすると、銀行への説明も余裕をもっておこなうことができるでしょう。
作業負担を軽くすることができるだけでなく、決算書の内容や見せ方を検討することができるのです。
決算時期を変えるだけで、様々なメリットを受けることができます。
運転資金を借りるためには
特に飲食店のような現金商売の場合、運転資金を借りることは難しいですが、これを借りられるようになると資金調達面でも新規出店面でもかなり有利になります。
新規出店時に設備資金の融資を受ける場合は、物件を申し込み、必要な設備すべての見積りを準備した上で融資を申し込まなければなりません。
しかも、手続きに多くの時間を使った挙げ句、融資が受けられないということもあります。
こうなった時、すでに物件を契約していれば非常に困ったことになります。
運転資金は設備資金のように使い道が限定されていないので、物件の契約書や工事の見積書は申し込みに必要ありません。
しかも特に資金が必要ないときでも、前もって借り入れておくことができます。
手元に資金を持っておくと、いい物件が見つかったときすぐに契約できるのです。
飲食店では借りにくい運転資金ですが、絶対に借りられないものではありません。
運転資金を借りるためには、銀行がお金を貸したいと思われる会社になればいいのです。
そのためには、格付けを上げなくてはなりません。
できるだけ格付けを上げて、銀行が魅力を感じる存在になれるよう会社に磨きをかけていきましょう。
運転資金を設備に当てるデメリット
資金繰りは、お金を早く回収し、支払いを遅くすることで楽になります。
このことからも、借入金の返済期間はできるだけ長いほうが、月々の返済金額が少なくなり資金繰りの負担は軽くなります。
しかし場合によっては、要望どおりの返済条件で融資を受けられない場合もあります。
ここで無理をしてしまうと、後々資金繰りで苦労することになってしまのです。
運転資金の返済期間は短い
一般的に運転資金の返済期間は、設備資金に比べると短く設定されています。
そしてその分、月々の返済金額は多くなります。
そのため、短期で返済する運転資金を出店資金に充ててしまうと、月々の返済負担が大きくなり資金繰りが苦しくなります。
出店資金を調達する場合は、できるだけ長い返済期間で借りるべきなのです。
例えば2000万円を借りるとき、期間3年で金利1.0%の条件と、期間7年で金利2.0%の条件どちらを選ぶでしょうか。
前者のメリットは金利が低く、後者のメリットは期間が長くなっています。
返済の総額を考えると金利の低い前者を選びたくなりますが、資金繰りの点から見れば返済期間にゆとりのある後者を選んだほうが良いでしょう。
それぞれの数字を比較すると、完済までに支払う金利総額は前者が約31万円、後者は約142万円です。
その差は約111万円ですが、1カ月あたりの金額に換算すると差はたった1万3000円です。
一方、毎月の元本返済額を見てみると、前者は約56万円、後者は約24万円となり、その差は約32万円です。
後者のほうが支払う総額は多くなりますが、月々の返済はかなり楽になるのです。
融資条件の標準を知れば得するワケ
金利は低いほうがいい、返済期間は長いほうがいいとは言いますが、何を標準として判断すればよいのでしょうか。
実は融資条件の考え方は、会社の経営状況により異なります。
例えば、銀行から返済期間7年と提示されたとき、妥当な条件だと感じる経営者もいるでしょう。
しかし経営状況がより良好な経営者は、7年の返済期間をあまりよいとは思えないかもしれません。
また経営状況があまりよくない経営者なら、7年でも良すぎる条件に感じるかもしれません。
ここで大切なのは、あなたが自分の会社の標準を知っておくということです。
自分の会社の経営状況を把握し、融資条件の標準を知らないと、不利な条件に気づかず借りてしまったり、よい条件で提示されたチャンスを逃したりするおそれもあるのです。
普段から、自分の会社の状況に目を配り、適正な判断を下す力をつけなくてはなりません。
可能性を無限に広げるあなたの地力
目標とする会社の規模が大きい人ほど、銀行とのお付き合いが重要になります。
そして、銀行から応援したいと思われるようになるには、経営者としての力を磨かなければなりません。
経営者の力というのは、会社経営の基盤をしっかり固め倒れない力です。
これは経営者の地力ということができるでしょう。
地力がつくことで、銀行から信用され融資を受けやすくなります。
そうなると、一気に事業を拡大できるチャンスも掴むことができるようになるのです。
例えば、M&Aの案件が転がり込んできたとします。
この案件受けたいと思っても、自己資金の余裕が少なく、銀行との付き合いもあまりない状況なら、融資を断られる可能性のほうが高いでしょう。
一方、自己資金をコツコツ貯めていて、銀行との関係性も良好ならスムーズに融資を受けることができます。
このように、チャンスが目の前に現れたとき、それをモノにできる準備をしておかなければならないのです。
地力を磨くためには、経営者としての自覚をもち、経営のお金の流れを読み、数字の管理ができなければなりません。
このような感覚を一つ一つ地道に磨き、強い会社を作ってください。
経営者に地力がついてくると、経営の選択肢が広がっていきます。
例えば、直営での多店舗展開を目指すだけでなく、独立支援、フランチャイズ展開、M&Aなど、さまざまな成長の形から自在に選ぶことができるのです。
また、これまでの常識にとらわれない新たな業態の開発、異業種とのコラボレーションのような試みもできるかもしれません。
経営の基盤が整えば、さらに経営者の夢は広がるのです。
飲食店で資金地用達を成功させるために
飲食店ビジネスは本当に難しいと思います。
開業の段階から「ヒト」「モノ」「カネ」が全て必要で、どれかがうまくいかないと経営がストップしてしまいます。
これが例えばコンサルティング会社の場合なら、初期投資はほぼ不要で「カネ」に関する土台はそれほど重要ではありません。
「ヒト」は経営者一人でも成り立ちますし、「モノ」もたいして必要ではありません。
私は、難しいビジネスモデルの中で頑張っている飲食店オーナーのみなさんを心から尊敬しています。
さらに多店舗展開という難関に挑んでいくのですから、何としても成功していただきたいのです。
あなたの夢を叶えるには、まず、倒産しないことが重要です。
そして、必要なときに必要なだけ最高の条件で資金調達できるような地力を身につけていきましょう。
地力が身につけば、あなたは夢を叶えるため迷うことなく一直線に進むことができるでしょう。